心寄す君とふたり
阿部「ごめん、やっぱ俺が運転しようか」
「ううん、大丈夫。気にしないで」
三度目のデートの日。仕事を済ませて、陽葵ちゃんが待つ車に乗り込む。
本当は俺が運転したかったんだけど、陽葵ちゃんが譲ってくれなくて、車の手配ごと任せてしまった。陽葵ちゃんは運転する姿も様になっていて、隣で見ててかっこいいって思うくらいだった。……てか俺より運転上手いかも。俺は「次、左折」とか「ここで右」とかそんな案内しか出来ない。
阿部「ここ上ってったら着くはず」
「なんかドキドキだね」
阿部「こんな山道運転させてごめん」
「亮平くんこそ大丈夫? 車酔いとかしてない?」
阿部「全然。むしろ俺より運転上手いんじゃないかな」
「え、それは買いかぶりすぎだよ」
くすくす笑いながら他愛もない話をしてるとあっという間に頂上に着いた。周りには誰もいなくて、景色はふたりだけのもの。
高みから見下ろす東京の夜景は凄くキラキラしていて、思わず感嘆の声が漏れた。
「すごい!」
阿部「ここ、綺麗だし穴場だって聞いたから」
「月並みな言葉しか浮かばないんだけど、本当にすごいね。綺麗……」
目を細めて夜景を楽しむ彼女。俺の目には陽葵ちゃんの方が綺麗に見える、なんて歯の浮く台詞を頭に浮かべながら、小さく深呼吸をして言葉を探した。
阿部「あの、さ。俺、今日伝えたいことがあって」
「ん?」
阿部「……俺、ずっと前から、陽葵ちゃんのことが好きです。俺と、付き合ってください」
心臓が飛び出しそうだった。自分から告白することも、初恋の子にこんな形で想いを告げることも、こんなに緊張するなんて思いもよらなかった。彼女が何も話さないのが怖くて下げた頭を上げれば、少し困った顔をした彼女と目が合った。
「ごめん、亮平くん。帰ろっか」
はいでもいいえでもない。はぐらかすようなその答えは一種の拒絶のように思えて、いろんなことを間違えたと後悔した。大人しく彼女の運転する車に揺られ、自宅まで送り届けられ「おやすみ」と呟く彼女に曖昧な返事をして、その後のことは覚えていない。気付いたら朝を迎えていた。