ダサくても情けなくても
テレビ局での移動中、前から歩いてくる市華を見かけた。……初めてあった時もこんなだったっけ。遠くからでも目を奪われるくらい綺麗で可愛い彼女を、今すぐ抱きしめて腕の中に収めたい。こんなとこじゃ絶対やれないけど。
目黒「お疲れ」
「お疲れ様」
目黒「今日何の仕事?」
「バラエティだよ。蓮くんは……それスノ?」
目黒「うん。見たらわかるか。つなぎだもんね」
「うん、すぐ分かった」
ふにゃりと笑う彼女につられて俺も頬が緩む。少し離れたところから「めめ〜!」と俺を呼ぶ声が聞こえた。そして声の主は俺のところに走ってきた。
ラウール「わ、城崎さん……! お疲れ様です」
「お疲れ様です……! この間の撮影ぶりだね」
ラウール「はい……!」
目黒「めっちゃ緊張してんじゃん」
ラウール「や、だって、城崎さんだよ?」
「ラウールくんの前だもん、緊張するよ」
「「えっ?」」
俺はラウールに言ったつもりだったけど、市華も緊張してたらしい。2人の声が揃ったことが面白くて笑えば、2人して俺の名前を呼んだ。いや、面白すぎ。そういや、市華、ラウールのこと顔面国宝とかって呼んでたっけ。
ラウール「緊張、してるんですか?」
「してます……! この間の撮影のときからずっと」
ラウール「えー! 全然そんな感じしなかったです」
「内心ドキドキでしたよ?」
ラウール「見えない……! 俺の方がドキドキしてます!」
目黒「行くぞ」
そう言ってラウールの肩を叩く。「痛っ!」ってラウールが声出すくらい強めに叩いたのは、たぶん嫉妬したから。俺に構ってほしいとか、俺だけ見ててほしいとか、そんな束縛じみたことを考えてしまって少しだけ反省した。
「あ、忙しいのにごめんね。収録頑張って。ラウールくんも、またね?」
ラウール「はい! また!」
嬉しそうに手を振るラウール。市華もそれに応えてて。……まじで今の俺、ダサい。そう思ってたら不意につなぎの袖を摘まれた。
目黒「え? ……あ、ラウール先行ってて」
ラウール「はーい。遅れないでよ?」
そう言ってラウールを先に行かせて、市華の方を振り向く。
目黒「なんかあった?」
「……嫉妬した」
目黒「え?」
「……ううん、ごめん。お仕事頑張ってね」
きゅっと袖を握っていた手が離される。そこを今度は俺が握り返す。
目黒「今日、早く帰るから」
「……うん!」
しゅんとした子犬みたいな顔がすぐに笑顔になる。あー、やばい。今すっごいキスしたい。待てって言われてる犬みたいな気分。ぎゅっと手を握って、その後ぽんって市華の頭を撫でた。
目黒「市華も収録頑張って」
「うん、ありがとう蓮くん」
帰ったらたくさん話そう。なんで嫉妬したのか。何に嫉妬したのか。たぶん聞いたら笑っちゃうくらいの可愛いやつだと思うんだよね。話し終わったら、嫉妬してたのなんか埋めるくらいたくさん愛し合おう。