そんくらいはするし、してやりたい


テレビの中で芸人さんが「怜奈ちゃんはどう? 恋愛とか?」なんてなんともな質問をぶん投げてる声が響く。BGM程度に流してたつもりだったけど、これアイツ出てんのか。当の本人はへらへらと笑って「愛されるよりも愛したいですね〜」って。なんだそれ。芸人さんも「KinKiか!」なんてツッコミいれてて。言っちゃ悪いけど面白くなくてそのままテレビを消した。

渡辺「……はあ」

スマホを開いて打ち込んだ『今日来んの』なんて愛想のない文字も、送信はできないまま消されていく。寂しいとか、会いたいとか、そういった気持ちを伝えんのはなんか苦手で、そういった気持ちに蓋をしてYouTubeを見始める。人気の動画とか、康二に教えてもらったやつとか、そういうのを片っ端から見てると不意にスマホが震えた。

「ちょったぁ?」
渡辺「は?」
「あははっ! ちょったぁ〜」
渡辺「お前飲んでんの。今どこ」
「ん〜、ここ!」

ぽんと送られてきたのは現在地。いや、近所じゃん。

渡辺「動くなよ。絶対そこから動くなよ」
「あ〜い」

念押して電話も繋いだまま家を出る。家から数分のところ、何も無い路上で怜奈はぼーっとしていた。てか仮にもお前タレントなんだからその酒癖の悪さどうにかしろよと内心悪態をつきながら、その腕を掴む。

「ちょった、ただいま」
渡辺「まだ家じゃねえし。つーかお前ん家じゃねえし、行くの」
「どこいくの?」
渡辺「俺ん家。酒くさっ、お前まじ?」
「へへ、じぇしくんとじゅりくんと飲んでた」
渡辺「は?」

なんでその2人。いやまあ、バラエティとかで共演はあるだろうけど。なんか、知った名前が出てくんのも、そいつらの前でこんなべろんべろんの姿見せてんのも嫌だわ。
部屋に戻って眠そうな彼女を風呂に放り込んでついでに俺も風呂に入る。

渡辺「おら、脱げ」
「きゃ〜、えっち〜」

素っ裸で湯船に浸かって、甲斐甲斐しく彼女の髪まで洗ってやる。気持ちよさそうに首をこくこくと揺らす怜奈にイタズラをしながら、目が合ったタイミングではそっとキスをした。

「しょーたぁ、暑い〜」
渡辺「は? 聞こえねぇ。てか大人しくしてろ」
「うぃ」

ドライヤーで彼女の髪を乾かしながら、ついでに自分の髪も乾かす。後ろから抱きしめてもバレないからこうしてるなんてのは言わずに彼女の世話を焼く。たぶん普段の俺を知ってるやつらからすると意外だと思う。

「今日一緒に寝る〜?」
渡辺「やだ」
「うははッ。あ、これいつものしょーたの真似」
渡辺「似てねぇ」
「一緒に寝よーね」
渡辺「……しょうがねぇな」

ふい、と横を向いたのは、彼女の顔を見るのが照れくさかったから。いつもよりも緩んた顔も、バカみたいに繰り返される同じ言葉も、似てないモノマネも、全部がなんか刺さって、俺好みって感じがしたから。
ふたり、寄り添ってベッドに沈む。ふわふわとした微睡みに落ちていく彼女の唇に触れるだけのキスを落として俺も目を瞑る。小さな寝息を聞きながら、俺もその後を追って夢の世界へ落ちていった。