ふたりごとを紡いで


「翔太はその人がいいんだよね」
渡辺「は? そんなこと言ってねえだろ」
「じゃあ何なの、これ」

そう言って見せられたのは共演者とのツーショット写真。しかもプライベートの。なにこれ、覚えないんだけど。目の前でぼろぼろと泣き出す怜奈をどうすることもできなくて、ただじっと見下ろしていた。

渡辺「……夢、か」

目覚めの気分は最悪。怜奈を泣かせたっていう事実にひどく胸を痛めた。ちゃんと誤解解かなきゃ、だな。
LINEを送っても既読はつかないし、電話をかけてもコール音しか鳴らない。じゃあどうしたら。……どうもできねえの。
むしゃくしゃした気持ちのまま書きかけたブログに追記のように今回の騒動に対する思いを書き連ねた。


暫くしてLINEに既読がついて『さっきの電話、何だった?』って返事が来た。『会って話したい』って改めて見たら別れ話でもすんのかってテンションの返信をしたことに後悔を覚えながらも、彼女が家に来るのを待った。

「どうしたの、急に呼び出して」
渡辺「ん、まあ。とりあえず、座れよ」
「う、うん」

ソファに座る彼女の隣に俺も座って、自分のスマホを徐に差し出す。

渡辺「気になるんならLINEとか、何でも見ていいから」
「え、いいの?」
渡辺「……気になんなら」

言っといてなんだけど、やっぱちょっと嫌かも。でも言い出したのは俺だから、そっと彼女の手に置いた。怜奈は俺のスマホを受け取って、でもすぐに「ありがと」と言って返してきた。

「でも気になんないからいいや」
渡辺「は?! 気にしろよ」
「え、いやいいよ。別に。正直そんな興味無い」

けらけらと笑う怜奈から受け取ったスマホをその辺に置いて、ぐしゃぐしゃと彼女の頭を掻き乱す。

「ボサボサじゃん」

むすっとした彼女は仕返しに俺の頭をぐしゃぐしゃにしてきた。「……翔太」とか細い声が洩れる。

渡辺「何?」
「……なんでもない」
渡辺「あ、そ。じゃあ、俺から」

一呼吸おいて「ごめん」と呟く。

渡辺「こないだ、言い過ぎた」
「……え?」
渡辺「ドラマの。匂わせとかってネットで叩かれてたから、怜奈もそれ見たと思って当たった」
「……あぁ。私の方こそごめん。私それ知らなくて。あの後、翔太がなんで怒ってんだろって調べて知ったんだよね。ごめんね」

小さく頭を下げる彼女を抱き寄せて、ぐしゃぐしゃに掻き乱した髪を手ぐしで直す。そしたら怜奈も同じようにしてきたから「これで仲直りってことで」と小さく呟いた。こつんと頭を合わせると「慣れないことしてる」って彼女はどうしようもなく嬉しそうに笑った。

渡辺「うるさっ」
「ふふ、好きだよ翔太」
渡辺「うわ! お前も慣れないことしてんな」
「たまにはね。翔太は? 私のこと好き?」
渡辺「……言わなくても分かんだろ」
「言ってほしいから聞いてんじゃん?」

うわ、耳まで熱くなってきた。こういうのなんか恥ずいってか、言わなきゃなって思いつつはぐらかすことが多くて、前に言ったのがいつかすらももう覚えてない。

渡辺「……好き、だから、怜奈と一緒にいる」

そう呟くと彼女は「そっかそっか〜」と嬉しそうに笑って俺にキスをした。

「私も翔太が好き。これからも一緒にいようね」
渡辺「……おう」

照れ隠しでまたぐしゃぐしゃと彼女の髪を掻き乱して、顔見せないように強めに抱きしめた。言葉にするのが照れくさい分、態度で示そうって。もう、彼女を不安にさせないって胸に誓って、その想いを唇に乗せた。