全部が全部照れ隠し


コンサートが始まる。9パラにそれぞれ映されて、登場してすぐに怜奈を見つけた。お前どんだけ近くにいんだよ。つーか俺も俺で、向こうは目深に帽子を被ってんのによく気付いたなって思う。彼女の胸の位置に掲げられたうちわはもちろん俺の。俺以外のやつの持ってたらガン無視だけど。

渡辺「帰さない」

君彼メドレーの決めゼリフ。誰かに向かって言ってるわけでもないけど、今日だけは頭の隅に怜奈の顔を思い浮かべた。そこにいるけど。
ファンサうちわを持ってる訳でもない。でも、ペンラもうちわも服装も俺仕様にしてくれてんの。悪い気はしないから、ファンサができるタイミングでパッとお望みのギャルピースをしてみた。怜奈は無反応で、隣の友達? が怜奈になんか話してた。お前、自分の彼氏がわざわざファンサしてやってんだから見とけよ。


『コンサートお疲れ様! なんかギャルピしてくれてたね!』

見てたのか。それとも教えてもらったからか。分かんねえし別にいいけど続けざまに『ラウールくんが可愛かった!』って言ってちいかわのスタンプ送ってくんのやめろ。

『裏来れば。スタッフに言っとく』

そう返事してしばらく待ってると「お疲れ〜」と手を振って怜奈が現れた。友達は帰ったらしい。

渡辺「おう」
向井「しょっぴ〜」
ラウール「えっ! 橘さん!?」
向井「ええ!?」
佐久間「あれ、橘さんじゃん。おっちー」
「佐久間くんおっちー! ラウールくんと向井さんははじめまして?」
ラウール「はじめまして!」
向井「本物やぁ……」
佐久間「てかなんで大阪いんの? 翔太が呼んだ?」
「ううん。普通に自分の名義で当ててきた」
佐久間「やば、ガチってんじゃん」
「渡辺ガチ勢なんで」

佐久間と怜奈って喋りだしたら止まんねえんだよな。んで、ラウールと康二は興味津々といった顔で俺と怜奈の顔を見比べてる。何もねえよ、そんな見たって。

ラウール「あ、今日しょっぴーがメンステでギャルピしてたのって橘さんと関係あったりします?」
「え、分かんない」
渡辺「お前まじないわ」
「私なんか言ったっけ」
渡辺「もういいわ、風呂入ってくる」

ぷいと風呂場へ向かえば「しょっぴー怒ってもうた」って心配そうに康二が呟いてんのが聞こえた。怜奈はけらけらと笑いながら「たぶん私がお酒飲みながらなんか言ったんだなぁ」って。

「律儀に応えてくれるのが翔太の可愛いとこだね」
ラウール「うわー、今惚気られてる?」
佐久間「すっげー惚気られてる」
向井「喧嘩じゃない?」
「あー、ああいうの日常茶飯事だから。すねすねくんなだけですよ」
渡辺「うるせえ!!」

さすがに恥ずかしくなって声を上げた。そんな俺に対して怜奈は全力でギャルピースをし返してきた。

翌日、コンサートも終わり東京へと帰る道すがらちいかわのキーホルダーを買った。この事も忘れてたらまじでキレるわ。たこ焼き食べてるやつと大阪のおばちゃんみたいな格好してるやつ。どっちもなんかゆるくてぬけてて似たように見えたから、喜ぶ怜奈の顔見たさに両方買ってやった。