どうしようもなく傷つけて傷ついた
暇な時には意味もなくスマホを見る。
そんな現代人の習慣を俺も同じように持っている。それに、Snow Manのことや自分のこと、世間がどう感じているのかを肌感覚で知っておきたいってのもある。だから、自分の名前がトレンドに上がってることに少し浮かれてたのかもしんない。
渡辺「え?」
目に入ったのは『しょっぴー匂わせとかまじ無理』って言葉。こないだ共演した女優さんとの匂わせ疑惑で世間は盛り上がってるみたいだった。
猫の話とか、同じブランドの服とか、あれこれ出てくる情報に驚きを隠せなかった。
……これ、怜奈も見たかな。まじで偶然なんだけど。会ったのはあの撮影のときくらいで、プライベートでの接点は一切ない。ぐるぐると思考を巡らせても何も解決しない。
「お邪魔しまーす」
渡辺「……おう」
「何? 変な顔してる」
渡辺「変じゃねーよ」
「じゃあ疲れてる?」
渡辺「別に」
「変なの」
そう言って笑う彼女は手を洗ってから俺の隣に腰掛けた。いつもと変わらない行動にほっとした半面、胸の奥がざわざわした。なんで何もしてないのに悪いことした気分になんだろ。嫌だな。
「そういえばさ、こないだのドラマ見たよ」
渡辺「え?」
「世にも奇妙な物語」
言葉が詰まった。「どう、だった?」って呟く声が震えた。彼女は変わらずへらりと笑って口を開いた。
「おそ松さんのときの翔太思い出して面白かったよ」
渡辺「なんだよそれ」
「いやあの時もタイムリープしてたじゃん? おじいちゃんだったし」
渡辺「もっとなんかねえの?」
「相手の女優さんにデレデレだったね」
渡辺「は? デレてねえし」
「えー? 写真見たけどめっちゃ女優さんに体偏らせてたじゃん」
渡辺「あれは……」
スタッフさんからの指示で仕方なくそういう風に撮っただけで別に他意はないんだけど。
「そういえば……、あ」
渡辺「何?」
「ううん、なんでもない」
渡辺「なんだよ、言えよ」
黙ったままなのも気まずくて、でもじっと彼女の言葉を待った。……言わなきゃ良かった、なんて後悔することになるのに。
「相手の女優さんと、仕事以外で会うことある?」
渡辺「えっ」
「翔太好きそうなお姉さんだったし」
渡辺「何、お前も疑ってんの?」
「……別に」
別にって感じの顔じゃねえじゃん。拗ねてるとかそんなじゃなくて、なんかもっと重くて暗い表情してて。らしくないなんて笑い飛ばすこともできなかった。
渡辺「……悪いけど、帰ってくんない?」
気付けばそんなことを口走ってた。腹の奥が相当ムカムカしてこれ以上一緒にいたら言っちゃいけないことも言いそうな気がしたから。
怜奈は「分かった」って呟いて、家を出た。別れ際、何か言ってた気がしたけど、普段の怜奈からは想像できないくらいの小さな声で聞き取ることが出来なかった。閉じられたドアを見つめてソファに項垂れる。
なにやってんだろ、俺。
深い溜息をついて目を閉じた。目覚める頃にはもう少し感情の整理がついてますように。