「わぁ……SixTONESさんだぁ……」
渋谷に張り出された広告に、わぁっと小さく感嘆を洩らす。去年今頃もここにアルバムの広告が貼ってあったけど、今年のもかっこいいなぁ。
「?」
不意にぽんと肩を叩かれる。振り向けば、黒いバケットハットを被ったお兄さんが立っていた。
田中「やっぱり伊織だ。何してんの」
「樹くん……?」
田中「ん。そー」
「樹くん樹くん、アルバムの広告! 凄くないですか?!」
田中「落ち着けって」
「あ、大きい声出してごめんなさい……!」
田中「いーから。場所だけ移動しよ」
「はい!」
歩いてる途中、話を聞けば、樹くんは近くで買い物してたらしい。ついでに自分たちの広告を見に来たら私がいたんだって。樹くんに連れられて少し歩いた先で、彼の車に乗り込む。
「樹くん運転するんですか?」
田中「おー。ダメ?」
「ダメじゃないですけど……!」
田中「けど?」
「疲れてませんか? お仕事もたくさんあって、毎日忙しいし……! 私、かわりますよ?」
田中「伊織はダメ」
「なんでですかぁ」
田中「なんか怖いから」
「怖くないですよ! ちゃんと免許も持ってますし」
田中「いーから。お前は横にいてくれればいーの」
ぽんぽんと私の頭を撫でて、車を走らせる樹くん。単純に嬉しくて、思わず笑みがこぼれてしまう。
田中「何笑ってんの」
「えへへ、樹くんがお兄ちゃんだったら、きっとこんな感じなのかなぁって思って」
田中「こんな感じって?」
「えーと……、優しくて、かっこよくて、すっごい妹に甘いお兄ちゃんっ」
田中「あー……たぶんそうだわ。てかさ、伊織」
「はい?」
田中「自分がめっちゃ甘やかされてるって自覚あるんだ?」
「あ。えへへ、バレちゃった」
樹くんもそうだし、SixTONESのお兄さん達にも他のグループのお兄さん達にも凄く甘やかされてるなぁって時々思う。その中でも樹くんはけっこー甘めだなあってのも。
信号が赤に変わる。樹くんは私の髪をぐしゃぐしゃと掻き撫でて笑った。
「わわっ、樹くんっ」
樹くんは私の髪がボサボサになるのを気にする様子もない。信号が青に変わるとすぐに車を発進させた。
田中「伊織、今なんか欲しいもんとかないの?」
「それこの間深澤くんにも言われました」
田中「師匠と一緒か俺。あの人も伊織に甘いなあ」
そう話しながら樹くんはくしゃりと笑った。「樹くんと一緒にいれて楽しいです」って言うと、せっかく直した髪をまたくしゃくしゃと掻き撫でられた。