※付き合ってるIf


「かつきぃ〜……」
克樹「何?」
「ここ、分かんない……」
克樹「ここはこの公式を使って……」

さらさらとノートに書き込んでいくかつき。伏し目がちな姿がかっこいいなぁってかつきの顔ばっかり見ちゃって勉強にならない。

克樹「こら、集中しなさい」
「あ、えへへ。かつきかっこいいなぁって、つい」
克樹「褒めてもだめ。伊織、理数苦手だししっかり抑えとかないと」
「うぅ……、おっしゃる通りです……」

苦手だから余計にやりたくなくなっちゃうんだよね……。せっかくかつきが教えてくれてるのに。……何かやる気が出る方法、ないかなぁ。……あ!

「じゃあ、私がんばるから、かつきからご褒美が欲しいです!」
克樹「ご褒美?」
「うん!」
克樹「うーん……。ん、分かった。何がいい?」
「んー、なんだろ」
克樹「決めてなかったんかい」

綺麗なツッコミが入ったところで勉強に戻る。ご褒美は後で考えよーって。なんでもいいよってかつきが言ってくれたから、まだ猶予あるしね。

克樹「さっきのおさらいだけど、ここにはこの式を当てはめるのね。こういう問題文のときはほぼマストでこの式だから、忘れないで」
「はい、先生!」
克樹「うん。返事はいいな。じゃあ、この場合はどうなるか分かる?」
「うーん……、ちょっと、待ってね」

問題文とにらめっこして、ノートに計算式を書き連ねていく。そしたら少しずつ、本当に少しずつだけど、答えが導かれていった。

「できた!」
克樹「ん、正解」
「はじめてちゃんと分かった!」
克樹「えぇ……」
「かつきは教え上手だね」

先生よりもずっと教え上手かも。それに褒め上手。「よく出来ました」って頭ぽんぽんしてくれて、それだけで凄く嬉しくなってがんばろって思えちゃうから。
それから数時間、みっちりお勉強をしてキリのいいところで「そろそろ帰ろっか」って話になった。

克樹「あ、そうだ。ご褒美、何がいい?」
「あ、忘れてた……! じゃあじゃあ、えっと……、ぎゅって、してほしい」
克樹「え?」

ちょっとだけ恥ずかしいけど、でもかつきが手を伸ばして待ってくれたから、大人しくその胸に飛び込んだ。

克樹「そのくらいなら、ご褒美じゃなくてもやるのに」
「えへへ、じゃあもう1個、お願いしてもいい……?」
克樹「何?」
「ちゅ、って、してほしい……です……」

少しだけ驚いた顔をして、でもすぐにかつきはふっと笑って私に顔を寄せた。触れるだけですぐに終わっちゃったのが寂しくて、物欲しそうな猫みたいな顔で彼を見つめる。

克樹「あーもう。そんな顔したら、歯止め効かなくなるから。……今日はこれで、我慢してください」

さっきよりも少しだけ長い時間唇が重なる。この時間が永遠になればいいのにってわがままを思っても、彼は私から離れていく。

克樹「好き」
「えへへ、私も好き」

ぎゅうってされる力がさっきより強くなって、なんだかかつきが全身で離れたくないって言ってくれてるみたいで嬉しかった。

克樹「帰ろっか」
「ん。……寒いから、手繋いで帰ろ?」
克樹「誰かに見られたらどうすんの」
「かつきにあっためてもらってますって言う」
克樹「ふは、まぁいいけど」

そう言って彼は手を差し出してくれた。その手をとって歩き出す。少しでも2人の時間が長くあるよう、いつもより少しだけ歩調を落として。



かつきは私だけの先生