※矢花くん視点
「ねぇねぇ、れーくんがれーくんって呼ぶの、デジタルタトゥー? なの?」
黎「うわ、聞いてたの?」
「聞いてたよ〜」
てか伊織ちゃんはデジタルタトゥーの意味分かってるんだろうか。ハテナがついてた気がしたんだけど。まあ、知らなくてもいいか。
「れーくんはれーくんなのに」
黎「やだよ、もう」
しゅんとする伊織ちゃんはこてんと首を傾げて唇を開いた。
「ご飯にする? お風呂にする? それとも、れーくんにする? ってやってくれないの?」
黎「なんで伊織ちゃんに言わなきゃいけないの」
「ふふ、せっかくだから。ほらほらっ」
黎「やだよ」
「れーくんにするって言いたいのに〜」
黎「黎くんにするって言うの?」
「え? うん、もちろん!」
黎「そっか、そっかぁ……」
それはちょっと嬉しいような、照れくさいような。よせやいって顔をして、全然関係ない話へと話題を逸らす。
黎「そういえば、課題終わった?」
「終わった! れーくんは?」
黎「俺もなんとか」
「ほんと? よかったぁ」
黎「課題終わってないと思ってた?」
「うん。いつやってるのかなぁって」
黎「まあ、時間を見つけてなんとか」
「おつかれさまです」
ぺこりと頭を下げる伊織ちゃんにつられて俺も頭を下げる。顔を見合わせて、へにゃっと笑って「自習室行こっか」ってどちらともなく言葉を交わす。
食べ終わった食器を片付けて、同じ歩調で歩いていく。学内でのこんな他愛もない時間も、あと少しかもしれないと思うと少し寂しさを覚えたり……。てか俺卒業出来んのかな……。