数回の読み合わせを終えて、今日から撮影。何回着ても学生服って慣れねえ……。
現場入りした瞬間から俺の目は彼女を探してた。……あ、見つけた。出番までまだ時間があったけど、見学させてもらうことにした。うわ、男バレの威力すげえ。
半泣きで走り回る名前さんを見つけた瞬間、思わず口がにやけた。可愛い。
小関「葉山さん、パス!」
「わっ」
小関裕太さんがぽいと投げたジャージを名前さんがキャッチする。原作にもあったシーンなのに、それだけで少しだけ胸がもやもやした。漫画読んでるときにはこんな思いしなかったんだけど。
監督「次、シーン12撮ります!」
夏生が部員たちでぎゅうぎゅう詰めになった部屋から出てふらふらと移動するシーン。渚が夏生の前で初めてバレーするところ。パァン! と大きな音が響く。うん、大丈夫。今日調子いいらしい。監督の声を聴いて芝居が始まる。
いい感じにサーブを決め、ボールが足元に転がってくるのを感じながら、視線の端で彼女を見つけた。
見蕩れる。そんな言葉が似合うくらい、彼女のまん丸の目が俺を映していた。「何?」と呟くと、彼女ははっとした。次の言葉を塞ぐように「はい、落ちてた」とボールを手渡す。ひらりと手を振って「マネージャーさぼんなよ」って言い残してその場を去った。
監督「はい! OKです! 阿部さん、こっちから別ショット撮るんでそのままでお願いします」
「はい!」
画面に映りこまないよう、カメラの後ろへと回る。そして息を飲んだ。彼女の表情があまりにもリアルで。葉山夏生そのものに見えた。なんとなくで見ても視線を奪われてしまう。きっとそれは、劇場で観たときにも伝わるんじゃないかって思った。
スタッフ「休憩入ります! 暑いのでしっかり水分補給してくださいね」
空き教室を改造したであろう休憩室には飲み物とかケータリングとかが並んでた。とりあえず飲み物だけ貰って名前さんの隣に腰掛ける。
「お疲れ様です」
目黒「お疲れ様です」
そんな形式ばった挨拶から始まったけど、他愛もない話をして、話題はすぐにSnow Manや阿部ちゃんのことに変わっていった。
目黒「ふっかさんとかとも仲良いんですよね?」
「そうですね。渡辺くんとか佐久間くんとかも……! Snow Manの皆さんには昔から仲良くしてもらってますね」
目黒「なるほど。この間名前さんの話になって」
「え!?」
目黒「映画決まった時に。ちょうど阿部ちゃんもいて、名前さんからも連絡あったって。ふっかさんがめっちゃ暴れてました」
「あははっ、想像つきます。辰哉くん、亮ちゃんよりも過保護だから」
あ、辰哉くんって呼ぶんだ。そのくらい付き合いが長くて、仲がいいってのをそれだけで感じちゃって、少しだけ胸が苦しくなった。
目黒「あの、タメ語で話しません、か? 同い年だし」
「えっ、いいんですか?」
目黒「はい!」
「分かりました! ……あっ」
目黒「ふふ、ちょっとずつで」
「うん」
スタッフ「阿部さん、目黒さん、次のシーンスタンバイお願いします」
あっという間に休憩が終わり腰をあげる。「頑張ろうね、目黒くん」って言って笑う彼女に不覚にもきゅんとして言葉が出なかったなんて恥ずかしくて言えそうにない。