出会ってすぐの頃、瑠依はずっと強がって生きていた。
女だからって理由でJr.とかスタッフとか、とにかく周りにいたあらゆる人間から舐められて、女だからって理由でアンチも少なくなかった。
小さい頃からそんな環境に身を投じていたわりに彼女は腐りはしなかった。ずっとニコニコしてたわけでもないけど、貪欲に彼女なりのアイドル像を追いかけていたようにみえた。
その横顔に一番焦がれていたのは俺たちだったと思う。だから、ずっと繋ぎとめていたかった。手離したくないと思っていた。
なのに、俺たちの思惑とは裏腹に瑠依は簡単に俺たちの前から姿を消した。
「俺さ」
「んー」
「瑠依のこと好きだったのかな」
「はえ?」
向かいに座っていた慎太郎が獣かってくらいの強い視線を俺に向ける。そんな睨むなって。冗談だよ。たぶん。
「いや、なんでもないわ。忘れて。疲れて血迷ったこと口走った」
「……や、北斗は瑠依のこと好きだったんじゃない? まあ、俺も、だけと。……たぶん、メンバーみんな、同じだよ」
そうこぼして慎太郎はスマホへ視線を落とした。俺も同じように自分のスマホに目を向ける。
柄にもなくSNSで瑠依の名前を検索にかけてみる。
『成瀬瑠依の唯一褒めれるところは事務所辞めてから軽率にSNS始めなかったところ。これからもずっとそうであってくれ』
『SixTONESってずっと6人じゃないの? 知らん女おるんやけど』
『それ成瀬瑠依』
『成瀬瑠依がいなくなってSixTONESのバランスが良くなった』
ずっとこういう言葉に塗れて生きてきたのかと思うとそれなりに同情する。まあ、それを瑠依自身が見てたかどうかは俺の知るところではないけれど。
『未だに成瀬瑠依に囚われてる。好きだったんだけどなぁ』
『成瀬瑠依って急に辞めたよね。7人で一緒にデビューしてほしかったな』
『成瀬瑠依見かけた気がして振り返ったんだけど全然違った。2年経っても忘れらんない、私の最推し』
彼女を非難する人だけがこの世に溢れていたわけじゃなかった。それはきっと彼女が腐らずに突き進んだ結果だ。ファンの言葉が瑠依の目にどれだけ止まっていたかは分からない。でも、彼女に向けられた優しい言葉が少しでも彼女の目に触れられますようにと願った。