深夜、君を迎えに行く

瑠依はずるい。時々LINEは返してくれるし、電話だって出てくれるのに、2年を過ぎた今でも1回も会ってはくれなかった。

「もうジャニーズじゃないから、慎ちゃんの隣は歩けないよ」

いつだったか電話したときにそう言って笑ってた。笑い事じゃないんだけど。俺もほかのメンバーも瑠依に会いたくてしょうがないんだって、瑠依だけが全然気付いてないの。

「飯もダメ?」
「ダメ。会わない」
「じゃあ、暇な時電話してよ」
「私からはしないよ」
「じゃあ俺からするから出てね」
「出てるじゃん」
「これからも、絶対」
「束縛が激しいな」

そう言いながらもその声はどこか楽しそうに聞こえて、俺も楽しくなった。少しでもいいから、瑠依と繋がってたいんだって改めて思い知った。
……たぶん俺たちが手繰り寄せないと彼女との縁はすぐに切れてしまうんじゃないかって、俺も頭の片隅で気付いてんだよ。考えないようにしてるけど、不安は胸に募ってんの。
でも瑠依と電話する度に、いろいろ話するようになって、瑠依がもう新しい人生を送ってるって知った時にはさすがに寂しくてどうしようもなくなった。
会って、抱きしめて、やっぱり帰ってきて、なんてそんなことは言えないけど、でも、頑張れ、俺も頑張るってそのくらいは言いたくなった。

「慎ちゃん?」
「……え、あ、ごめん」
「もう寝る?」
「や、まだ起きてるけど」
「考え事でもしてた?」

なんで分かるんだろ。……思えば、瑠依は人の心の機微に敏感な方だった。電話越しでもその能力が発揮されるとはと驚きながらも、昔の彼女の片鱗を見たようで嬉しかった。

「瑠依のこと考えてた」
「え、何それ」
「やっぱりさ、俺、瑠依に会いたい。もう1回7人で集まりたいよ」

電話切られたかと思った。何も返事がなくて、不安になって少しして「瑠依?」って声をかける。

「……はぁ、やば。ずるいよ、それ」
「え、何? もしかして泣いてる?」
「泣いてない……!」

そうは言ってるけど、電話越しの声は明らかに震えていた。

「泣いてない、けど、どうにかなりそう」
「どうにかって?」
「気持ちが、ブレる……。辞めたこと、後悔はしてないし、今の仕事変えるつもりもない。ただの一般人なのに、私も皆に会いたいって、思っちゃって、一緒の時間過ごしたいって、願っちゃって……」

ワガママすぎるって彼女は泣いたけど、俺からしたらワガママにも入らないくらい可愛いお願いだと思った。たぶん、メンバーに話したら皆喜んで了承してくれるはずだ。

「いいじゃん、一緒に飯でも行こうよ。それともまた、瑠依んちでぎゅうぎゅうになりながら話す?」

場所なんてどこでもいい。7人が揃えばなんだって楽しいから。

「……その二択なら、ご飯かな」

そう言って瑠依は笑った。俺も笑った。
そうと決まれば善は急げ。6人のグループLINEとは別に7人のグループLINEを作った。

何これって全員からきて、最後に瑠依が入った。

「続きはあっちで話そ」
「うん」

そう言って二人きりの電話を切って、グループLINEの方で繋ぎ直す。賑やかすぎるくらいの声が響いて、そのほとんどが瑠依に向けられたものだった。

// list //
top