積み上がるもち

「んー……」
「ねえ、奏依ってば」

少し大きな声に驚いて手を止める。声の方を見れば、むすっとした顔で立っている大男がひとり。

「照くん」
岩本「やっとこっち見た。何回か呼んだのに」
「え、ごめん。気づいてなかった……」
岩本「何してんの」

隣に腰かけた彼にスマホの画面を見せる。やってたのはツムツム。さっくんと蓮がCMに起用されてから数年ぶりに再開したんだけど、これがなかなか難しい。無課金勢の蓮にも、重課金勢のさっくんにも歯が立たず悔しい日々を送ってる。だから時間を見つけて数重ねてみてるんだけど、私ツムツムの才能ないのかな……。

岩本「佐久間倒せた?」
「全然。手も足も出ないよ」
岩本「ふーん。見てていい?」
「あんま上手くないけど」

気にせず照くんは私のスマホを覗き込んだ。小さい画面を2人で見てるわけだから、もちろん肩も触れるくらいに体は近くて少しだけ心臓が跳ねた。照くんいい匂いするなぁ。

岩本「昔もしてたよね、こういうの」
「あー、たしかに。待ち時間とかにやってたかも」

ゲームがスタートするとおしゃべりもままならず、黙々とツムをなぞっては消していった。なんか息が止まりそうになるんだよね。1ゲーム終えて呼吸をすると隣で照くんが小さく拍手を送ってくれた。

岩本「すごいじゃん。いっぱい消してた」
「ありがと。でもほら、さっくんたちもっとすごいの」

ランキングを見せると彼は目を丸くして驚いていた。またゲームに戻ってプレイを始めると暫くしてマネージャーさんが私たちを呼びに来た。

岩本「奏依、一旦終了」
「あと、ちょっと……」
岩本「終了」
「……はーい」

ゲームを終了させると、先に立ち上がっていた照くんが手を差し出してきた。特に気にすることも無くその手をとる。立ち上がってもなお手は握られたまま。

「照くん、もう手大丈夫なんだけど」
岩本「ダメ。手離したらまたゲームするでしょ」

そう言って彼は、次の現場の直前まで手を離してはくれなかった。


top