No match for you
「舘様お誕生日おめでとうございます! お迎えにあがりました!」
宮舘「おはよう、奏依」
「おはようございます」
3月25日。俺の30歳の誕生日。日付が変わってからいろんな人におめでとうと言われたけど、面と向かって言われたのは奏依が最初。昨日の晩、急遽決まったデートに少しだけ胸を躍らせながら、奏依の車の助手席へと乗り込む。
「音楽、好きなのにしていいよ」
宮舘「ありがとう。今聴いてるのは……、これ、SHISHAMO?」
「そうそう」
彼女の好きなバンドのひとつ。奏依が好きだからなんとなくは知ってたけど、ちゃんと聞いた事は正直あまりないかもしれない。
宮舘「じゃあ今日はSHISHAMOの日で」
「えっ、いいの?」
宮舘「うん。俺も奏依の好きな曲知りたいし」
「ふふ、じゃあたくさん聞いてください! 超可愛いから」
今流れてるのは『ドライブ』って曲らしい。鼻歌まじりに運転する奏依を横目に流れる景色に視線を向ける。
宮舘「そういえば、この車どこに向かってるの?」
「ショッピングモール! 14時からはアフタヌーンティーも予約してあるよ」
至れり尽くせりというかなんというか。奏依と2人で出掛ける機会ってのは今思い返せばそんな多くなくて。彼女が運転する車に乗るのも実は初めてで、柄にもなく少し緊張した。
宮舘「運転上手だね」
「そう? 良かった。この車、さっくんくらいしか乗せたことないから不安だったんだよね」
くしゃりと笑う彼女につられて俺も笑う。佐久間は乗ったことあるんだ。そこからは少しだけ車の話をして、安全運転のままショッピングモールへと辿り着いた。
「何処から行こうか」
宮舘「あ、ここノープランなんだ」
「バレた? 舘様が欲しいのあれば見に行けるし、ウインドウショッピングするだけでも楽しいから」
宮舘「たしかに。じゃあ、あっちの服屋から見て行ってもいい?」
「はい、喜んで!」
俺の好きなブランドの服屋に行って新作のチェック。メンズだけど、奏依ならこういうのも着こなしそうだなと思って宛がってみる。
「私?」
宮舘「似合いそうだなって」
「本当?」
宮舘「うん、奏依は綺麗だからね」
「あ、ありがとう、ございます……!」
照れくさいのか目深に帽子を被り直す奏依の頭をぽんと撫でて自分用の服を探す。いくつか目星をつけて、次の店へと向かう。それを何回か繰り返してたらいつの間にか次の予定の時間になってた。
宮舘「奏依、何か買ったの?」
「うん。舘様が似合いそうって言ってくれた服とか」
宮舘「あ、そうなんだ。今度着て見せてね」
「もちろん」
他愛もない話をしながら今度は奏依が予約してくれたホテルへと向かう。桜のアフタヌーンティーなんだと嬉々として語る奏依の顔が可愛くて思わず顔が緩む。
用意された和紅茶とスイーツに舌鼓をうちながら、時折セイボリーへと手を伸ばす。
「幸せ……。……あ、これじゃあ私の方が楽しんでる?」
宮舘「大丈夫。俺も楽しいよ。こうして奏依とゆっくりお茶する機会もあんまりないからね」
「ふふ、たしかに。お家でご飯はあるのにね」
宮舘「むしろそっちが多いから外ではってなるのかな」
「なるほど」
90分間の憩いの時間はあっという間に過ぎてしまう。俺たちはまた奏依の車に乗りこんで、テレビ局へと車を走らせた。
宮舘「今日はありがとう。奏依とのデート、楽しかったよ」
「私も楽しかったよ。あっという間だったね」
宮舘「うん。あっという間だった。……本当はもう少し一緒にいたいくらい」
「え? この後も一緒じゃん。仕事だけど」
宮舘「そうだね」
そういう意味ではないんだけど。うちのお姫様は一筋縄ではいかないらしい。まあ、だからこそこんな男ばっかりの中でもやっていけてるのかも。
「舘様、今日仕事終わってからって予定ある?」
宮舘「え? 特にないけど」
「じゃあ帰りも送っていきたいな」
本当にうちのお姫様は。どうしてこうも簡単に欲しい言葉をくれるのか。敵わないなと笑いながら「お願いします!」と元気よく返事をする。
仕事終わり、家まで送ってもらった上にプレゼントまで貰ってしまった俺は彼女にこの想いをどう返していいのかと頭を悩ませながら眠りについた。