2021.07.05
「お邪魔しまーす……!」
合鍵を貰ってるとはいえ、勝手に彼の部屋に入るのは今でも少し緊張する。大介くんはわりとナチュラルに私の部屋にいるけど、私は内心ドキドキのバクバクで、今大介くんが帰ってきたらびっくりして叫んじゃうかもしれない。
「ふふ、喜んでくれるかな……」
此処へ来る途中に受け取ってきたケーキを冷蔵庫にしまい、持参したエプロンを身に纏う。「お借りします……!」と呟いて彼のキッチンに立つ。
いつもだったら背中に熱視線が刺さるのに、今日はそれがなくて少し寂しい。
……今日は雑誌の撮影だっけ。もしかしたら、メンバーの皆さんからお祝いとかされて、帰ってくるの遅くなるかも。そこまで考えてなかったなぁ。LINEするのも、なんだか申し訳ないし。
「んー……、うん。いつもの味」
Snow Manの曲を口ずさみながら、ひとつ、またひとつと料理を完成させていく。いつも以上に盛り付けにもこだわるのは、今日が彼にとって大切な日だから。……ううん、彼だけじゃなくて、私にとっても凄く大切な日。
佐久間「あれ、美彩いる?」
「あ、大介くん。ふふ、お邪魔してます」
佐久間「え、ご飯、作ってくれてる……!?」
「うん、出来てるよ」
佐久間「やぁばい! 俺お腹ぺっこぺこでさぁ、先食べていい?」
「ふふ、じゃあ今並べるからちょっと待ってね」
佐久間「あ、俺も手伝う!」
帰ってきて早々、ぱぁっと目を輝かせる彼の姿を見て顔が綻んだ。手を洗って、テーブルを拭いて、食器を並べて、2人揃って手を合わせた。
佐久間「全体的に、マジで良い! 好き!」
並べられたご飯を見て大介くんはそんな嬉しいことを言ってくれた。その言葉だけで胸がいっぱいになっちゃって、ご飯も喉を通らなくなるくらいで。……もちろん、心配されるからちゃんと食べるけど、でも大介くんが食べてる姿を見てるだけで幸せでついつい手が止まっちゃうのも事実。
佐久間「超美味しかったぁ〜! んふふ、今日来てくれたのって〜、もしかして、佐久間さんの誕生日だからだったりする〜?」
「あ、バレちゃった。お誕生日おめでとう、大介くん」
佐久間「んははぁっ! ありがとぉ〜」
「ケーキあるけど、食べれそう?」
佐久間「食べる食べる!」
冷蔵庫からケーキを取り出して食卓に並べる。外はちょっとピンクがかってるけど中はチョコ味のホールケーキ。雪だるまやハートのアイシングクッキーが乗ってて、ハートが散りばめられてる可愛いもの。
佐久間「え! 俺これ見たことある! ファンの子のSNSとかであるやつだ!」
「ふふ、そうなの。あれ、やってみたくてオーダーしたんだ!」
佐久間「やぁば! え、写真撮っていい? 」
「いいよ〜。私も撮りたい」
2人してケーキを囲んで写真を撮って、私はケーキと大介くんの写真も撮って、せっかくだから2人で記念写真も撮った。
「食べていい?」と尋ねてきた彼にうんと頷きながらカメラを回し続ける。おっきなひと口でケーキを頬張る彼の一瞬一瞬を記録に残したいなんて私のワガママ。
佐久間「んふふ、これやばぁい。美彩、あーんっ」
「あー……ん、ふふ、美味しい」
思わず笑ってしまうくらい甘くて、幸せが倍増してしまう。ちょっと大きいかなって心配してたけど、これなら案外ぺろっといけちゃうかも。
佐久間「あんねぇ、佐久間さんねぇ、お願いがあんだけどぉ」
「何?」
佐久間「……お風呂、一緒に入りたいなぁ、なんて」
ぽっと頬を赤く染めて「ダメ?」って聞かれたら、ダメなんて到底言えなくて、つい首を縦に振ってしまう。
佐久間「ほんと!? んじゃ、俺! お風呂溜めてくる!」
ぱたぱたと走っていった彼の背中を見つめながら、ケーキを口に運ぶ。甘いチョコの味は忘れられない大好きな味になった。