友人として
※阿部くん視点
田中「えーっと、俺なんで呼ばれたんすか?」
深澤「そりゃあまあ、ちょっと聞きたいことあって」
渡辺「お前、佐倉さんとなんかあったりとかしてないよな」
言葉を濁すふっかと対照的にどストレートな物言いの翔太。いや、それにしてもストレートすぎるでしょ。
田中「なんかって?」
渡辺「浮気とか」
田中「佐倉さんと? ないない! てかしょっぴー、ドラマ決まった時点で俺に釘打ってきてんのにまだ疑ってんの!?」
目を大きく開いて驚く樹はすぐに手を振って否定していた。いや、まあ、そうだよね。てか翔太そんなこと言ってたんだ。
田中「てか佐久間くんの彼女っすよ!? 絶対手出すわけないじゃないですか!」
深澤「いやでも樹だからなあ」
田中「ないっす! ないない! 絶対ない!」
深澤「んじゃあ佐倉さんと他の男の噂とかは?」
田中「それもないっすね。断言できます」
阿部「なんで?」
樹は頭を掻きながら「だってあの子、めちゃくちゃ佐久間くんのこと好きですもん」と言葉を続けた。
阿部「そうなの?」
それスノとかで来てもらうことはあってもいつもシークレットで来てそのまま帰っていくことが殆どだから、終わったあと楽屋で話とかしたことない。だから俺らはあんまり素の佐倉さんのことを知らない。
田中「撮影の休憩中とかほとんど佐久間くんの話しかしてませんし」
渡辺「は?」
深澤「まじか」
けらけらと笑う翔太。まあ樹と佐倉さんの共通の話って佐久間くらいしかないからかって思ったり。でも、作品が進むにつれてもう少し話すこともできそうなものだけど。
田中「自分のことよりも、佐久間くんのことばっかり話すから」
阿部「そうなんだ」
田中「俺たぶん今誰よりも佐久間くんのこと詳しい自信ありますもん」
そう豪語する樹。最近佐久間と佐倉さんが見たアニメの話とか、好きな食べ物の話とか、ふたりの馴れ初めとかまで聞いてるらしい。
田中「時々晩飯の相談とか受けることもあるし。んで、次の撮影のときに、作りましたって写真見せてもらってんすよ」
渡辺「めっちゃ惚気られてんじゃん」
田中「いやほんと。惚気しかないっすよ。あー、でも最近、佐久間くん、映画? やってるじゃないですか」
深澤「あー、白蛇ね」
田中「それにキスシーン? あるらしくて、何回も観に行ってんのにそこだけ、まだちゃんと観れてないって言ってましたね。見るの、苦しいって洩らしてたし」
渡辺「ほー」
田中「アニメ映画なんでしょ? って言ったら、それでも嫉妬するって。嫉妬したこと、恥ずかしくて佐久間くんに言えてないって言ってましたけど」
深澤「なるほどねぇ」
田中「とにかく毎日毎時間佐久間くんのことばっかり考えてる佐倉さんに他の男が入る余裕なんてないと思いますよ?」
マネージャー「あ、田中さん、いた……! 撮影そろそろ始まるんでお願いします」
田中「へーい」
深澤「おつかれー」
阿部「ありがとね」
田中「いやいや。んじゃ、また」
そう言って樹は去っていった。残された俺たちは顔を見合わせて「……佐久間の勘違いなんじゃね?」と話し合った。
阿部「煽ったのふっかと翔太だけど」
深澤「だって、ねー?」
渡辺「俺知らねー」
阿部「いや翔太だからね。浮気って言い出したの」
深澤「ま、俺がちょっとフォロー入れとくから」
そう言われて、じゃあ、とふっかに任せた。
仲直りってか、佐久間のモヤモヤが解消できたらいいけど。まあたぶん佐倉さんが過剰に甘えてくる原因は樹の言ってた白蛇のキスシーンなんだろうけど。そこはふたりの問題だしこれ以上は考えないでおこう。