偶然の一致か運命の合致


前の仕事が早く終わってしっかりめに時間が空いた。何しようかな。お昼食べに行こうかな。ランチタイムはちょっと過ぎてるけど、まだやってるお店もあるだろうし。……あ、そういえばここ、社員食堂が美味しいって有名なんだっけ。
気になって見に行けば、社員にしては派手なピンクの髪の男の人を見かけた。珍しいなぁ、こんなとこで会うの。

「ここ、いいですか?」
佐久間「あ、はい。……え? 美彩!? なんでいんの!?」

突然の大きな声にこっちがびっくりする。くすくす笑いながら「前の仕事、早く終わったの」と説明すると「あ、俺も俺も〜」と彼も頷いた。

佐久間「んふふ、嬉しいなぁ。外で会うのってなかなかなくない?」
「んー、そうだね。お仕事被らないとあんまり……」
佐久間「だよねぇ。なんか美彩の顔見ただけですっごい元気出てきた」
「ほんと?」
佐久間「ほんとほんと!」

ふにゃりと笑う彼につられて私も笑みをこぼした。美味しいご飯がよりいっそう美味しく感じるのはきっと大介くんのおかげ。

佐久間「美彩ガチャ引いて〜」
「いいよー。ウマ娘?」
佐久間「そーそー! んでねぇ、今欲しいのがカレンチャンって子!」
「かれんちゃん……女の子みたいな名前だね」
佐久間「馬主さんの娘さんの名前からつけたんだってー」
「そうなんだ……! ほんとに女の子の名前だ……!」
佐久間「んふふ、そーだねぇ」

ガチャ画面を指でタップすれば、たづなさんと呼ばれたお姉さんが走り出して、レース場の画面に移る。銀、銀、金……あ、虹色。どれが良いのか分かんなかったけど、虹色は当たりっぽい。あ、もう一個虹色出た……!

佐久間「やば……、え、えっ、え!?」
「ん? あ、かれんちゃん……!」
佐久間「まじ美彩天才すぎ……! しかもマルゼンスキーまで!」

大介くんが狙ってたかれんちゃんが出たのも嬉しいし、なんだか他にも可愛い子が出てきて、それで大介くんが喜んでくれて私まで嬉しくなる。

佐久間「ほんとありがとう……! やっぱ美彩は俺の女神だね」
「大袈裟だよ」
佐久間「……あのさ、今日家行ってもいい?」

さっきまでの明るくてよく響く声が、秘密の話をするときみたいな小声に変わる。小さく頷くと「んは、やったぁ」と彼は笑った。

マネージャー「あ、こんなところにいた」

声の主はマネージャーさん。そういえば『お昼食べてきます』ってLINEしたきりだった。

佐久間「お疲れ様でーす」
マネージャー「お疲れ様です」

ちらと私を見た彼女の顔には、約束してたの? って書いてあった。してないよ。たまたま。

「もう時間ですか?」
マネージャー「うん。ちゃんとご飯食べれた?」
「はい!」
佐久間「んじゃ、俺もそろそろ行こっかなぁ」
「お仕事頑張ってね」
佐久間「ん、美彩もね」

ひらひらと手を振ってお互いに次の現場へと向かう。今日はなんだかいつもより頑張れそうって思うのはちょっと現金すぎるかな。