可愛くなりたい
そろそろくると思ったのは数日前のこと。目が覚めて、あぁやっぱりと思ったのは今朝のこと。
もぞもぞと布団から抜け出すことも出来ずにスマホを覗く。あ、今日お休みだ。マネージャーさんありがとうございます。もしかしたら彼女は私よりも私の体のこと分かってるのかもしれない。
「薬……」
常温の水で薬を流し込む。今日はご飯もいらないかなぁ。ベッドサイドにペットボトルを置いて、ベッドに寝転がる。あ、大介くんからLINE来てる。
『あとちょっとで着くから!』
あ、そうだった。久しぶりに休みが合うから一緒に行って過ごしたいって大介くんがこの間話してて、二つ返事で了承したんだっけ。
急いで顔洗ってメイクして着替えて髪の毛セットして……。ちょっとでも可愛く見られたくてちょっとだけ無理した。
佐久間「美彩〜!」
「いらっしゃい、大介くん」
佐久間「ん、こんにちはぁ。早く会いたくて来ちゃったけど、大丈夫だった?」
「ん、大丈夫」
佐久間「んふふ。ちょーっとごめんねぇ」
まだ会ってから数分なのに彼は私をひょいと抱えてベッドへと下ろした。
佐久間「なんか俺に隠してることあるでしょ」
「え?」
佐久間「お腹、痛いんじゃない?」
「……分かるの?」
佐久間「分かるよ、そりゃあ。何年彼氏やってると思ってんの。ほら、寝て寝て。それとも、俺も添い寝しよっか?」
くしゃりと笑う彼に、思わず顔が綻ぶ。敵わないなぁ、ほんと。せっかくしたメイクもよく見たらちょっとよれてて、これじゃあバレるかなんて思いながら落とした。
「せっかく、髪の毛セットしたのに」
佐久間「んふふ、超可愛かった」
「メイクもしたのに」
佐久間「唇ぷるぷるでめっちゃ可愛かった」
「せっかくのお休みなのに……」
佐久間「んー、でも俺、こうしてんのも好き。美彩のお世話したい」
ベッドに腰かけて彼は私の髪を撫でた。額にキスをひとつ落として「なんかしてほしいことある?」って聞いて。
「添い寝、してほしい」
佐久間「んぇ!? まぁじ!?」
「ん。だめ……?」
佐久間「だめじゃない! え、いいの? じゃあ、その、お邪魔します」
目と鼻の先に彼がいる。その安心感が多幸感へと変わる。壊れ物に触れるみたいに優しく抱きしめてくれるだけで、ドキドキと心臓が高鳴って寝られなくなる。
佐久間「……お腹痛いの、大丈夫?」
「大丈夫だよ」
だからそんな顔しないでほしいな。不安げな彼の頭を撫でるとくしゃりと笑われた。
佐久間「そういえば、薬とかあんだよね? 飲んだ?」
「飲んだよ、大丈夫」
佐久間「なんか欲しいのあったら言ってね。俺すぐに買いに行くし」
「ありがと。大好き」
佐久間「んはは、俺も大好き!」
少しだけ重たい気持ちもお腹の鈍痛も緩和された。2人で身を寄せあって目を閉じる。「おやすみ」と呟く彼がそっと私の唇に口付けた話はまた起きてからしようかな。