心拍数が上がる


俺が美彩と付き合ってから5年。そろそろいいんじゃない? って勝手に思ってることがある。何かって? んふふ、それはね……、同棲。結婚じゃないんかーい! ってさくみあファンとかは思うかもしんないけど、それはまだ先の話かな。でもそんな遠くない未来だと思ってる。こういうの、絶対段階踏んだ方が楽しいじゃん? だからまずは同棲から。
休みの日はお互いの家にいることが多いし、俺は仕事終わりでも会いたくなったら美彩んち行っちゃうし……それならいっそ、一緒に住んだ方がいいんじゃない? って思ったんだよねぇ。まだ美彩には言えてないけど。

佐久間「どーすりゃいいんだろ」
阿部「何? ゲームの話?」
佐久間「ううん。美彩の話」
阿部「何かあったの?」
佐久間「んー? んふふ〜、俺ねぇ、そろそろ美彩と同棲したいんだよね」
阿部「へぇ、いいじゃん。もう付き合って5年だっけ?」
佐久間「そー。そろそろいいかなぁって思って。んでもさぁ、どーやって言ったらいいかわかんなくて」
阿部「ストレートに言えばいいじゃん」

阿部ちゃんの言う通り。ストレートに言っちゃえればいいんだけど、なんだろ、俺も不安なのかな。断られたら〜とか、余計なこと考えちゃって勇気が出ない。
後からきたふっかと翔太は、俺がうんうん唸ってるのが珍しかったのか楽屋に入ってすぐ俺をいじりだした。
阿部ちゃんへの相談? もそこで終了。


***


佐久間「ただいまー!」
「おかえり。もう自分の家みたいだね」
佐久間「え?! う、うん! まじで居心地いいから!」

やべー、今なんか変な感じだったよね。ちょっと動揺しちった。美彩、俺の考えてること分かっちゃった? みたいな。大丈夫、たぶん誤魔化せてる。美彩に視線を向けて確かめる。あんまり気にしてなさそうだったし大丈夫!
ただいまのちゅーをして、2人で美彩の特製ハンバーグを食べて、ついでに一緒にお風呂も入って、普段だったらもう完全にいちゃいちゃリラックスモードなんだけど。今日は、どうやって同棲のこと切り出そうか考えまくっててなんだか落ち着かない。

「……大介くん、何かあった?」
佐久間「え?」
「今日やけにそわそわしてるから。何かあったのかなぁって」
佐久間「えっ、俺そんなわかりやすかった?」
「うん、わかりやすい」
佐久間「まぁじかぁ」
「帰ってきてからずっと。ご飯の時もお風呂の時も、上の空だったでしょ」

ぷぅ、と膨れてみせる美彩の可愛さにきゅんきゅんしてしまう。てか美彩、そんなちゃんと俺の事見ててくれたんだ。些細なことなんだけど、なんか凄い嬉しい。……うるさいくらいドキドキいってる心臓を落ち着かせて美彩に向き合う。

佐久間「あんね、ちょっと大事な話あんの」
「……何?」

あ、今ちょっと不安そうな顔した。何の話だと思ってるんだろ。……じっと美彩は俺のこと見てて、でも、徐々にその顔が歪んでいく。

佐久間「んぇ!? 美彩泣いてる!?」
「……ないて、ない、っ」
佐久間「ごめん! 泣かせるつもりじゃなかったんだけど!」

ぎゅって抱きしめて、よしよしってあやしてあげる。何もしてないのに、美彩が泣きそうになってることに驚いて「どーしたの」って躊躇いがちに声をかける。

「……何も言わないから。別れるって、言われるんじゃ、ないかって」

しゃくりあげながら少しずつ言葉を紡ぐ彼女。この数分でそんな不安にさせてたなんて思ってもみなくて「別れないよ。俺、絶対美彩のこと、手放すつもりないから」と彼女を抱きしめる腕に少し力を込めた。

佐久間「てかね、俺、美彩が思ってたのと真逆のこと考えてた」
「真逆……?」

腕の力をゆるめて、真っ直ぐに美彩を見つめる。涙を滲ませていた目元はちょっと赤く染まっていて申し訳なくなった。俺が泣かせたんだって罪悪感。
ごめんね、の意味も込めて最大限の笑顔を浮かべて言葉を紡ぐ。

佐久間「……俺と、一緒に住まない?」
「えっ」
佐久間「今日ずっとそのこと考えてた。どーやって言おうかなって。んで上の空になってたり、美彩のこと泣かせたりして。……俺、ダメダメな彼氏だけど、それでも美彩とずっと一緒にいたいんだ」

心臓がドキドキいってて今にも飛び出しそう。「ダメかな……?」って首を傾げても美彩は俯いたまま。

佐久間「……美彩?」
「……ずるいよ、大介くん」

顔をあげた彼女はまた大粒の涙で頬を濡らしていた。たださっきまでの不安そうな表情はしてなくて、ちょぅとだけほっとした。ぎゅうっと俺を抱きしめて「……本当に、いいの?」って小声で呟く美彩。いいも何も、俺からお願いしてるのにダメなわけないじゃん。「うん」と首を縦に振れば、美彩の方からちゅーしてきて、二人でソファに倒れ込んだ。

「心臓、飛び出ちゃいそう……っ」
佐久間「んははっ! 俺もさっきまでそんな感じだった!」
「……嬉しい、本当に」
佐久間「ん、俺も」

お互い何も話せなくなって、ただぎゅうって抱きしめ合って、時々キスもして。言いたかったこと言えたからか、やっといちゃいちゃリラックスモードがやってきた感じ。

「……お部屋探し、する?」
佐久間「んーん、今日はもう美彩だけに集中する」

俺の首に腕をまわす美彩を抱き寄せて、寝室へと向かう。部屋探しはまた明日からで。