ジレンマ


『今日宮田くんとご飯行ってくんねー!』

付き合い始めの頃から何度も見たこの文面。む、と唇を突き出しても誰もいない部屋ではただただ虚しいだけで。少ししてから『楽しんできてね』と返事をしてスマホを閉じた。

「……いいなぁ、宮田さん」

今朝まで二人で寝てたベッドに一人転がり、彼の洋服をかき集めて眠る。嫉妬してるわけじゃないの。でも、大介くんにこんなに好かれてるっていう事実が羨ましくて、ずるいなって思っちゃう。……あれ、やっぱり嫉妬なのかも。
行かないでなんて言えないし、言うつもりもないけど、けど……。
もやもやとした気持ちごと抱いて目を瞑る。


***


佐久間「……あ、起こしちゃった?」
「……だい、すけ、くん?」
佐久間「そー。んふふ、ただいまぁ」

真っ暗な部屋でくたりと笑う彼。髪からは私と同じシャンプーの匂いがして、手繰り寄せるように彼を抱きしめた。

佐久間「わはっ! んふふ、好きぃ」

彼はぎゅうって私を抱きしめ返してベッドへと潜り込んだ。私と彼の間には彼の服がいくつか挟まれていて、でもそんなこと気にせずに彼は私との距離を縮めようとする。

佐久間「俺の服、抱いて寝てたの?」
「……ん」
佐久間「かぁいい。あんねぇ、今日ねぇ、宮田くんとご飯行ったんだけどねぇ」
「……うん」
佐久間「美彩の話になってぇー、んふふ。ほぼ俺の惚気なんだけど〜。もうすぐ同棲しますってのも、話させてもらったのね?」

私の頬を撫でながら彼は笑う。

佐久間「そんでねぇ、美彩が良かったらぁ、今度、3人でご飯行けないかなぁって」

照れくさそうに笑いながら「ダメ?」なんてこぼして。……ダメなわけない。大介くんの大切な人に、会わせてもらえるんだって気持ちで、驚きと嬉しさが綯い交ぜになって、感情の整理が上手くつかなかった。

「ダメじゃない……!」
佐久間「ほんと!?」
「ほんと。嬉しい……」

嫉妬してたのが馬鹿らしくなるくらい。嬉しくてその気持ちが少しでも伝わればいいなって思いながら彼を抱きしめた。