独占
久しぶりに早い時間に仕事が終わった。茉白も今日は早かったみたいで、俺が帰る頃にはもう晩御飯の支度をしていた。
岩本「なにか手伝おうか」
「ありがとう。でももう出来るから大丈夫だよ」
岩本「じゃあここで見てる」
「ふふ、恥ずかしいから座ってて」
挨拶代わりにキスをして椅子に座る。でも視線は彼女に向いたまま。邪魔になるからと料理のときは必ず髪を束ねていて、無防備なうなじがちらちらと俺を誘惑する。
「はい、お待たせ」
岩本「ん、待ってないよ。ありがとう」
「ずっとこっち見てなかった?」
岩本「見てた」
「良かった、自意識過剰じゃなかった」
ふふ、と笑いながら晩御飯を食べ始める。「茉白のこと好きだから、見てた」なんて甘いことを言えば、彼女は幸せそうに笑って「惚気だ」と呟いた。惚気だよ。
岩本「風呂、一緒に入ろ」
「ん、いいよ」
晩御飯を食べ終えて茉白が片付けしてる間に風呂の支度して、少しだけ筋トレもする。風呂が沸いたら先に茉白が入っていって、暫くしたら「いいよ」って声がかかる。同棲して何ヶ月か経ったし、裸だってお互い何度か見たことあるのに、それでも茉白は恥ずかしいって笑う。可愛いからいいんだけどさ。
岩本「なんでそっち向いてんの」
「だって……、ひーくんの裸、見れない」
岩本「え? もっと鍛えた方がいい?」
身体を洗って髪も洗ってから湯船に浸かる。茉白を抱き上げて膝の上に乗せて向かい合わせで座らせる。
岩本「目、逸らさないで」
「……ひーくん、かっこいい」
岩本「ふは、いっつもそれ言ってない?」
「毎日毎分毎秒思ってるの」
岩本「なにそれ。可愛い」
ほんのりと赤く染まった頬を撫でながら唇を重ねる。啄むようなキスを繰り返して、そして深く口付ける。
岩本「……茉白」
「なぁに……?」
岩本「好き」
そう呟くと、彼女の方が唇を重ねてきた。「大好き」って真っ直ぐ見つめられながら言われて、止められそうになくて。小さな独占欲が胸に浮かんだ。
岩本「茉白。痕つけていい?」
「え?」
岩本「俺のって印、残したい」
俺のわがまま。茉白だって雑誌の撮影とかあるし普通に仕事もあるからさすがに首とかは無理だろうけど。「この辺りに」と胸元を指さす。ここなら、凄く胸元の開いた服とか着ない限りは見えないでしょ。てかここにつけたキスマーク見れるような関係の男とか他にいたらそいつのこと殴りに行かなきゃ行けないし。
「……ん、分かった。でも1個、お願いしていい?」
岩本「何?」
「私もひーくんに、痕、つけたい」
岩本「え?」
「……だめ、かな?」
こてん、と首を傾げて笑う彼女。その顔に弱いってきっと茉白は知らないでやってるんだろうなあ。俺以外の前でやってなきゃいいけど。
岩本「分かった。とりあえず上がろ」
長風呂のしすぎで茉白の顔が真っ赤になってたから。りんごみたいに真っ赤に熟れたその頬に触れてたい気持ちを我慢して、彼女を抱き上げて軽く身体を流して風呂を出る。バスタオルで身体を拭ってあげて、寝室へ向かう。服なんか着てる余裕はない。
翌朝、隣で眠る彼女の胸元に、腰に、背中に、散々キスマークが残っていて、ちょっとやりすぎたなと反省した。ただ、ひとつ、俺の太ももに残った痕を見て、顔が緩むのも抑えられなかった。ここならメンバーでもそうそう見るやついないからね。なかなか痕がつかなくて困ってた昨夜の彼女を思い出しながらもうひと眠りする。愛してるよという代わりに彼女の髪を撫でながら。