欲求


岩本「ただいま」

って言ってもまだ彼女は帰ってきてないらしい。真っ暗な部屋にひとつずつ明かりをつけて全室確認したけどやっぱりいない。……早く帰ってこないかな。荷物を置いて筋トレを始める。考え事は一旦やめて、筋肉に集中すれば、自分でも気付かないうちに時間が過ぎていった。

「ただいまー。あれ、ひーくん?」
岩本「あ、おかえり」
「ただいまぁ」

汗を滲ませる俺に構わず抱きついてくる彼女。「汗くさいよ」って笑えば「ひーくんだから嫌じゃない」って返された。俺じゃなかったら嫌なんだってちょっと笑いながら、俺以外に抱きつかないでよって願いながら、今日も一日頑張って仕事した彼女を力いっぱいに抱きしめた。

「筋トレもう終わり?」
岩本「んー、もーちょい」
「じゃあ、私先にお風呂入ってくるね」
岩本「え、もうちょい待って。すぐ終わらせる」
「……だめ。今日は1人で入ります……!」
岩本「なんで」

む、と唇を突き出せば「いろいろ、あるの」とキスされた。脱毛はサロンでやってるって言ってたからたぶんスクラブとかすんのかな。別に、隠さなくてもいいのに。てか俺は茉白が茉白だったら、太っとってても毛むくじゃらでも絶対愛せるって自信あるんだけどな。

岩本「もっかいして」
「ん」

触れるだけのキスのはずだった。わざと彼女の後頭部に手を置いて逃げられないようにしたら、彼女は困ったように視線を向けてくる。長くて深いキス。求めれば求めるほどに呼吸が荒くなって、奥底からじわじわと劣情が湧き上がる。離したくないなぁ。ずっとこうしてたい。なんかもう茉白が俺の一部になればいい。まあ、そんなこと無理なんだけど。
名残惜しく唇を離せば、目を蕩けさせて彼女が笑った。

「もうダメ。あとで、ね?」

一生懸命手を伸ばして俺の髪を撫でて、風呂場へと消えていく彼女。撫でられたとこが少しだけ熱くて、きゅんてして、今離したばかりなのに抱きしめたくてしょうがない。
彼女がお風呂から出てくるまでの数十分。残ってたトレーニングをこなして、追加でまた別の部位のトレーニングもした。湯上りの彼女とすれ違うように風呂に入って急いで上がる。濡れた髪もそのままで、彼女を抱きしめる。

「ひーくん、ここ座ってー」
岩本「ん」
「髪の毛乾かしまーす」
岩本「ん。お願いしまーす」

ソファに座る彼女の脚の間に座って身体を預ける。ドライヤーで彼女が髪を乾かしてくれてる間に、パジャマの短いズボンの間から伸びる脚に触れる。

「ふふっ、くすぐったい」
岩本「んふ、超もちもち」
「触りすぎ。ほら、こっち向いてくださーい」
岩本「はーい」

大人しく髪を乾かしてもらう。「終わったよ」の言葉と共に振り向けば「お疲れ様」とキスされた。

岩本「ねえ、もういい?」
「ん?」
岩本「さっき、"あとで"って言ったでしょ?」
「あぁ……!」

ふわりと笑う彼女を抱きしめて「明日、仕事何時から?」と聞けば「明日、お休みだよ」って。嬉しくなって唇を奪う。「いいよね?」って聞けば、何も言わずに彼女は頷いた。頬が真っ赤に染まってるのは、風呂上がりだから? それとも、今からすることを想像したから? なんて。