力になりたいなんてのは口実で
宮舘「あれ、珍しいね。今日は小説書いてないんだ」
「あ、涼太くんいらっしゃい。昨日原稿上がったからね〜」
へらりと笑う彼女は珍しくソファに腰かけながら少女漫画をぱらぱらと捲っていた。
宮舘「何読んでるの?」
「ハニーレモンソーダ」
宮舘「あ、それラウールが出てた作品だ」
「ラウールくんって、涼太くんとお兄ちゃんのところのメンバーさんだっけ」
宮舘「そう。最年少の子ね」
「へぇ、凄いね」
目は本から離さずに会話を続ける彼女。仕事熱心にも程がある。「今度は何書くの?」と尋ねれば「恋愛小説」とだけ返ってきた。
宮舘「え?」
透華の口から恋愛小説って言葉が出るなんて、正直言って想像もしていなかったから驚いた。
「編集さんがね、たまには新しいの書いてみない? って」
宮舘「いいんじゃないかな」
透華が書く話ならきっと面白い。まだ見ぬ話に胸を躍らせて小さく頷いた。でも彼女の表情は暗い。
「恋って、なんなんだろうね」
ぽつりとこぼした言葉。どれだけ小さくても聴き逃しはしない。彼女の頬をそっと触れたいと願う気持ちを抑えて、くたりと困ったように笑う。
宮舘「透華は、恋したことない?」
「んー……ないね。出会いないし。ずっと小説のことばっかり考えてる引きこもりに会いに来るの、編集さんか涼太くんくらいだよ? あと、ごく稀にだけどお兄ちゃん」
宮舘「翔太そんなに来ないの?」
「うん。LINEもしないし、涼太くんから話聞くから生きてるんだーって知れるレベル」
宮舘「あははっ、それはやばい」
そんな連絡とってないんだ。でも何かと翔太が透華のこと気にしてるっての、俺は知ってるんだけど。じゃないとあんまり本読まないのに小説買ってみたり、時々SNSでパブリックサーチしてみたりしないだろうからね。
宮舘「たまには連絡してみたら?」
「んー、いいの。そのくらいの距離感の方が楽だし」
宮舘「そう。……ねえ、試しに俺とデートしてみる?」
なんで急にそんなことを言ったのか。ひとつは透華の仕事のため。どんな形でもいいからいつもとは違う非日常を味わってもらって、良い刺激にしてもらえたらなって。そして、もうひとつは俺のため。男として意識してもらえるきっかけになればいいなって。少しだけ焦ってるのかもしれないけど、でも、俺たちの関係にも何かしら進展があればいいなって、願望を込めて。
「うん、いいね! お願いします!」
彼女はそうして首を縦に振った。
そして俺たちは次の水曜日にデートすることになった。