その横顔があまりにも綺麗で
「おはよ、涼太くん」
宮舘「おはよう」
朝からずっと浮き足立って、予定よりも2本早い電車に乗ってきたなんてさすがに言えない。30分ほど早く着いて、彼女が来るのを今か今かと待ち望んでいた。そしたら15分ほど過ぎたところで透華が来た。
「私の方が早いと思ってたのに。ごめんね?」
宮舘「ううん。透華のこと待ちたかったから」
「何それ」
くすくすと笑う彼女の表情はいつもと変わらないのに、一生懸命施された化粧とコーディネートのおかげで何倍も大人っぽく可愛らしく見えた。
普段だって十分可愛いんだけどね。あの動きやすさを最大限考慮した格好の透華ばかり見ている身としては今日の姿はとてもギャップがあって、少しだけ目のやり場に困る。ワンピースから伸びる細くて白い腕とか脚とか。
「じゃあ今日一日、よろしくお願いします」
宮舘「ふは、よろしく」
しっかりと頭を下げる彼女をさりげなくエスコートしながら本日のデートスポットへと向かう。場所は水族館。「昔、透華んちの家族と俺んちの家族で遊びに行ったことあったよね」なんて話してると、かくんと彼女の膝が折れた。「大丈夫?」と聞きながら彼女の肩を抱いてみる。
「ヒール、慣れなくて。ごめんね」
宮舘「ううん。俺のために可愛い格好してくれたんでしょ? 髪も巻いて」
「編集さんがね、デートするんだったらこのくらいしなきゃっていろいろ準備してくれたんだ」
宮舘「へぇ、編集さんが」
透華の担当編集者って男じゃなかったっけ。……他の男が選んだ服着て俺とデートってのはちょっと、許し難いところだけど今回は可愛い透華が見れたから目を瞑ろう。
水族館のチケットを2枚持って、彼女を中へと誘う。
「涼太くん」
宮舘「ん?」
「忘れる前にちょっと、書いてもいい?」
宮舘「どうぞ? どこか座れるとこ行こうか」
そう言ってすぐ側のベンチに腰掛ける。何か思い浮かんだのか、彼女はカバンの中から取り出したメモにたくさんの文字を書き連ねていく。数ページにわたり書き殴られたそれが何かは分からないが、彼女は一通りそれを書き終えると満足気な顔をして頷いた。
「お待たせ。行こっか」
宮舘「うん。お手をどうぞ、お姫様」
「えっ?」
宮舘「また転んだら危ないからね」
「そっか。じゃあ、お願いします」
そう言って彼女は俺の手を取った。平日だから人は少なくて、ゆっくりと見てまわることができた。いるかとか、ペンギンとかそういった可愛いものにはしゃぐのかと思いきや、水槽をひとつひとつじぃっと見ていく彼女。時々、擬音を口に出して何か考えてる辺り、もう職業病なんじゃないかと思って笑ってしまう。
「え、なんで笑ってるの?」
宮舘「いや、ふふ。仕事熱心な透華が可愛いなって」
「え? 私何か言ってた?」
宮舘「ずっと口から擬音が漏れてた」
「わ、恥ずかしいやつじゃん。止めてよ」
宮舘「可愛かったよ」
本当に、と付け加える勇気がなくて、少しだけ力を込めて彼女の手を握った。