そのあどけない笑顔に恋をして
ぐるりと一周して、らんらんと目を輝かせた彼女はまたベンチで何かを書き出した。頭の中からたくさんの語彙が溢れて止められないと、いつだったか話してたのを思い出した。どんな格好をしてたって、透華は透華なんだなって思って嬉しくなる。そんなどこまでも真っ直ぐな透華が好きだから。
「できた。……あっ」
宮舘「ん? まだ見足りないものあった?」
「うん! ふふ、よく分かったね」
宮舘「何年幼馴染やってると思ってるの」
「えへへ、さすがです。じゃ、行こっか」
今にも駆け出しそうな彼女の手を捕まえて隣を歩く。あの魚が可愛かったとか、でもやっぱりあのイワシの大群が1番だとか、チンアナゴも可愛いよねとか、そんなことを嬉々として語る透華はどこにでもいる女の子と相違ない。俯瞰して俺たちを見てるもう1人の俺が、しっかりデートしてるじゃんと俺を笑った。
「わぁ……、凄い……」
イワシの大群が流れる水槽。視界いっぱいに広がる大きな水槽には他の魚もいるけど、目を引かれるのはそのイワシたち。一斉に群れを生して動く彼らを子供みたいな目で見つめる透華。すごいすごい、と彼女は喜ぶけど、俺の視線の先には透華ばかりが映って、彼女のいう凄さは伝わってこない。ただ、目の前の彼女が綺麗で、可愛らしくて、愛おしくて、たまらなく好きだという恋慕の気持ちだけがふつふつとこの胸を焦がしていた。
「楽しかった!」
宮舘「それは良かった」
「初めてのデートが涼太くんとで本当に良かった」
彼女は静かに微笑みながらそう呟いた。それを言うのは俺の台詞だよって思ったのに、いつもの調子で口からは出せなかった。ぽんと彼女の頭を撫でて頷くだけ。
彼女を家まで送り届けて、いつもみたいに数日分のご飯を作る。その間に彼女はずっと机に向かって文章をしたためていた。