チューリップ柄のスマホケース


来たんはいいけど、なんも言うてなかったから、インターホン押す手が震える。これで追い返されたらどうしよ。ダサいとか恥ずいとかそんなもんじゃない。でも、このまま帰るのも考えられん。

「はい……」
向井「あ、えっと、みちゅ? 俺、なんやけど……」
「え、あ、じーこ、先輩……?」
向井「ごめん、来てもうた」
「え、あ、えっと、とりあえず、あがってください」

そう言ってエントランスの施錠が解錠される。みちゅの部屋まで行くん初めてやな。あかん、ドキドキしてきた。うわ、心臓うるさっ。
玄関のピンポン押したらすぐにみちゅが出てきた。目元がちょっとだけ赤くなってて、もしかして泣いとったんかなって心配になって、彼女の頬を撫でた。

「なん、で……?」
向井「……ごめんな、勝手に来て」

ぶんぶんと首を振って否定するみちゅ。どうしていいか分からんくて、彼女を抱きしめた。

向井「……あんな、俺も、ずっとみちゅのこと、好き、なんよ。やから、さっきその、好きって言ってもらえて、めっちゃ、嬉しかったんよ」
「……本当、ですか?」
向井「ほんま。ずっと、みちゅのことが好きやった」

俺の胸の中でぼろぼろ泣き出す彼女の髪を掻き分けて目線を合わせる。つられて俺も泣きそうで、目尻にじんわり涙が滲んだ。

「好き、です」
向井「俺も好き」
「大大大好き……っ」
向井「俺かて、関西におったときからみちゅのこと、大好き」
「……ただの後輩なんだと、思ってました」
向井「俺も、先輩止まりなんかなって、思ってた」
「……越えたら、もう戻れないから、躊躇ってました」
向井「俺も。勇気出んかった」

顔を見合わせて、涙を指で拭って、はにかんで、顔を寄せる。濡れた唇が微かに甘くて、離れてもまた追いかけたくなった。何十回、何百回、好きって言ったって足らんくらい想い続けてたから。結ばれた高揚感に歯止めが効かんくなっとるかもしれん。

向井「俺と、付き合うて、くれますか……?」
「……っ、はい。ずっと、じーこ先輩の、傍にいさせてください」
向井「ん、おってください。んで、俺も、みちゅの隣におるから」

そう言ってまたキスをした。触れるだけの可愛いやつ。照れくさくなって笑って、それから、マネージャーに連絡した。一応、そういう話になりましたから、ご報告も兼ねて。ちょうどお互いのマネージャーも一緒におったらしくて、そこに滝沢くんもおって、その場で報告させてもらった。

滝沢「それで? どうするの?」
向井「俺は、公表したいです」
「私も……。賛否はあるかもしれませんが、黙っているのは違うと思うし、ティアラのみんなに嘘をつくこともしたくないです」
滝沢「そう」

滝沢くんは「分かった」とだけ言い残して、その場を去った。電話越しでマネージャーたちが「そのように取り計らいます。明日またお話しましょう」って言って、話は終わり。電話を切ってから、マネージャーが俺宛に『おめでとうございます。良かったですね』と送ってきてくれて顔が綻んだ。おおきに。また会った時言うけどな。