私がそう呼べば、彼女は素直に振り返り私を確認すると笑顔を見せて「なぁに、司君」と名前を呼び返してくれる。その行為は、彼女にとって誰にでもする当たり前の行為で、私が彼女の特別になったわけではない。
「lesson、一緒に行きませんか?」
「ふふふ、いいよ」
手を差し出すと、笑ってからなんの躊躇いも無く手を握ってくれる。それだけでも十分に嬉しいのに、彼女はさらにこう言う。
「みょうじ最初から司君と一緒に行くつもりだったのに、司君から誘ってくれるからなんだか嬉しかったです!」
そんな事言われて、嬉しくない訳がない。ただのクラスメイトと見られてるのはわかっているが、それでも彼女とこうして手を繋いで歩けるのは、やっぱり嬉しいから。彼女があの人に抱いてる恋心に自覚するまでの間だけでもこうして隣りを歩くことを、どうか許してください。
「あっ、なまえ!と誰だっけ?」
「朱桜司です、leader!」
「月永先輩、どこ行くんですか?レッスン室反対ですけど」
この人はまだ私の名前を覚えてくれない上に、レッスンをサボる気満々じゃないですか。ムッと顔を顰めると彼は変なヤツだなと笑って、私が握ってるのと反対の彼女の手を握った。
「なまえがなかなか来ないから迎えに来てやったんだ!」
「今日は司君と日直だから遅れますって言ってましたよね?」
「んん?そうだっけ?」
そうでしたよ、と唇を尖らせながらもどこか嬉しそうななまえさんに勝ち目が無いのが嫌でもわかってしまう。私から見ても二人は良いペアだと思うが、やっぱり自分を選んでほしい気持ちも捨てきれない。
「それにしてもお前ら仲良いよな。よく一緒に歩いてるし」
「当たり前です!司君はみょうじのお友達ですからね!」
「Classが同じですから、一緒に行った方が効率良いですしね」
確かにそうだな!なんて微塵の嫉妬も見せずに余裕の表情を浮かべるleaderに、また惨めさが増す。余裕の表情と言っても、ただいつもと変わらないのは私もわかっていて、二人とも何も意識していないのに私だけ変に意識しているだけなのだ。
「あっ!あんず先輩!!!」
「お昼ぶり、なまえちゃん」
なまえさんはお姉さまを見かけた途端、繋いでいた手をスルリとほどいて、お姉さまに駆け寄りそのまま抱きついた。leaderもその後を追い、何やら三人で楽しそうに話をしている。その輪に入るタイミングを失い、その場に立ち尽くしていると、なまえさんが振り返り、
「司くん!何してるのおいでよ!」
と手を差し出して誘ってくれる。それが嬉しくて、笑顔になってしまう。
「司とずっとお友達でいてくださいね…」
「ほら、はやくー!!」
君を愛していたという私の真実
戻る
NEVER LAND