ある一点で向かい合う

名前も知らない彼女に気づいたのは割と最近だった。ライブ終わりの出待ちしてるファンに紛れていつも隅っこでこっちを見ていて、他のファンの子とは違って我先にと話しかけようとしない。だけどいつも隅っこにいて、こっちを楽しそうに見ている。ライブを見に来てくれるのだからきっとKnightsのファンなのだろうが、誰を見ているのかは定かじゃない。こんな調子で彼女の事が気になっていたのだけれど、如何せん話しかけて来ないのでこっちから話しかけるのも気が引ける。制服を着ていることから夢ノ咲学院の生徒であることは知れたが、それ以外の事柄はなに一つわからない。いつもなら妄想で補えるのに答えが知りたくて仕方なくなる。


「最近の王様、なんか変じゃない?」
「…そうか?」
「変だよ。ずっと何かを考えてるじゃん」


寝床から顔だけを出してこちらを見るリッツがそう告げた。皆の前ではいつも通りにしていたはずだが、リッツはよく人を見ている。深紅の瞳がジッとおれを見つめていて、反論する言葉を失う。


「別に俺は関係ないけど、王様らしくないんじゃないの。そうやって悩むなんて。いっつも俺達を振り回すのが王様でしょ」


伝えるだけ伝えてリッツはさっさと帰って行った。霊感もどっかに消えてしまったし、ここにいつまでも居るわけにもいかないからおれも帰ろうとスタジオを出る。廊下の窓から校門を見ると、相変わらずアイドルの出待ちしているファンが何人か見えた。そこに彼女が居ないか探してしまうのはやっぱり…。

校門に来て見ても彼女の姿は無くて、少し残念に思ってしまう正直な脳みそが辛い。こんな纏まらない感情じゃ、目の前を踊る音符も色を失い歪んでしまって作曲なんて出来やしない。こんな時はさっさと帰ってるかたんに癒されるのがいい。しかし帰路を急ぐ足は赤信号によって止まってしまう。


「あ、」


横断歩道を挟んだその先に彼女が居た。彼女もおれに気づいて目を見開いている。そしてあたふたしはじめて後ろを向いて逃げようとする。


「待て!待って!!そこにいて!!」


車の音に掻き消されないように、大声で彼女に届くようにストップをかける。そして信号が青になった瞬間に向かい側へと走る。音符が色付き始める。




ある一点で向かい合う
「おれ、月永レオっていうんだけど…」
「し、知ってます…!『Knights』のリーダーさん。わ、私はみょうじなまえ、です」
「そっか。なまえ、やっと話せたな!」






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NEVER LAND
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