「あんず先輩!一緒に帰ってもいいですか」
私があんず先輩に話しかけると、あんず先輩は一瞬冷たい目をしてから貼り付けた笑顔を見せてくれた。あんず先輩は私の事がどうやら嫌いみたいだ。理由は知らない。
「なまえちゃん…、ごめんね。これからレッスンがあるから一緒には帰れないや」
「そうですか。なら仕方ないですね!また今度一緒に帰りましょう!」
手を振ってあんず先輩が見えなくなるまでそこに居た。どうしたらこの気持ちは報われるんだろう。私が男の人だったら、あんず先輩に振り向いてもらえたのだろうか。
ああ、私が男の人だったら。
なまえちゃんと別れてから、レッスンの予定なんて無かったので行くあても無く学院内を彷徨っていた。そして私は後ろ姿を見つけてしまった。
「レオ先輩…!」
この人は、私の気持ちもなまえちゃんの気持ちも知っている。まあ、私もなまえちゃんの気持ちを理解していながら蔑ろに扱っているのだからこの人の事を酷いとは言えない。
「おぉ、あんず!いい所に!なまえを知らないか?一緒に帰ろうと思って探してたんだけど見つからなくてさ」
なまえちゃんを好きな事をこの人は隠そうともしない。それなのに全く気づかないなまえちゃんは、幸せなのか不幸せなのか。
「さっき帰ろうって誘われたので、もうきっと帰っちゃいましたよ」
「…なんでおまえ一緒に帰んなかったの?」
私を冷たい目で見るレオ先輩。そんなになまえちゃんの事を想っているのだと思うと、胸が苦しくなる。
「ちょっと用事があって」
「ま、別にいいけど。あんまりなまえを泣かせるなよ。泣かせたらおれはおまえに何するかわからないからな!わははははっ」
どうしたら私の気持ちは報われるんだろう。なまえちゃんがずるい。こんなにレオ先輩に想われてるのに、それに微塵も気づかないで私に冷たくされて悲しそうな顔をする。憎くてたまらない。
ああ、私がなまえちゃんだったら。
おれを学院に連れ戻したのはあんずだ。そのおかげでKnightsとも友好な関係を築けたと思うし、なによりなまえを知れた。だから感謝をしていないわけではない。けれど、その感謝だけで好意に応える事は出来ない。
「じゃあ、おれはなまえを追いかけるから」
ただ一言名前を言うだけで、憎しみを孕んだ顔をする。そんな顔をされたって、おれはあんずをそんな目で見れない。それに早く行かなければ、魔法少女に隠した涙を見るのはおれだけで十分だから。
「たとえなまえがおれを待っていなくても、おれはなまえを迎えに行くんだ。おまえと違ってなまえから誘ってくれる事なんて無いからな」
なまえから慕われ想われてるのに、それを蔑ろに扱ってるあんずが忌々しい程に羨ましかった。
「あれ、月永先輩だ…」
昇降口になまえはいた。いつもと変わらないような笑顔を見せているが、ブレザーの中に着ているパーカーの袖口が濡れている。おれを見てくれたら、泣かせたりしないのに。
ああ、おれがあんずだったら。
あんず先輩に一緒に帰れないとフラれてから少しだけ涙が溢れた。だけど涙を袖口で拭いたら私はいつもの魔法少女になれる。そう暗示をかけて、目が腫れてないのを確認してから私は歩き出した。だから誰かに会っても私が泣いた事は悟られない自信があった。
それなのに、
「泣くくらいなら諦めたらいいのに」
「つき…なが、せんぱい…?」
月永先輩は私の涙を見破った上に、私を抱きしめてそう言った。この涙に気づくのはあんず先輩が良かったのに、抱きしめてくれるのもあんず先輩の方が柔らかくて好きなのに。
「なまえはホントに馬鹿だな」
もうわからないの。何でこんなに苦しいの?答えをくれるのは、あんず先輩じゃないの?月永先輩はなんでこんなに泣きそうなの?
ちぐはぐな結び目
(ああ、むくわれない)
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NEVER LAND