「寒いのは苦手だな…」
こうも寒いと学院から出たくなくなるし、人肌恋しくなるからあんまり好きじゃない。秋より春のほうがやっぱり好きだ。だけど、そんなことを思っていても日本には四季があるのは変えられない事なので、帰る為に校舎にから出る。それだけで風が遠慮なく吹いてきてとても寒い。
「明日はマフラーとか手袋してこよう」
そう呟くと、ひときわ強い風が吹いて落ち葉を巻き上げていった。よく見るとその落ち葉には見覚えのあるような五線譜が書かれていた。そして何やら叫び声が聞こえてきたけど何を叫んでいるのかは如何せん風が強くて聞き取れない。でも声の主は容易く予想できる。寒いから早く帰りたいけど、気になってしまい声がした方へ足を運ぶ。
「何してるんですか、月永先輩」
「おぉ、なまえか。たった今自然におれの作品を奪われたところだ!」
「こんな寒いのに外で曲を書いてたんですか?」
そこには予想通り月永先輩が落ち葉まみれになって座っていた。いや、落ち葉まみれになってるのは予想してなかったけど。
「誰かが落ち葉を集めたままにしててさ、これはダイブしなきゃなって思ってしたら、いい感じに霊感が冴え渡ってそのまま落ち葉にメモしてた」
枯葉でも集めるとなかなかあったかくなるなと笑う月永先輩。落ち葉の山にダイブなんて子供ですか。ていうか、その落ち葉集めたの意味なくなってるじゃないですか。跡形も無いじゃないですか。
「なまえは今帰りか?」
「そうですよ。月永先輩はまだ帰らないんですか?」
「いや、帰ろうかな。メモも飛ばされて戻って来ないし、暗くなってきたし、それに今帰ればなまえと一緒に帰れるってことだしな!」
わけわかんない。なんでそんな恥ずかしいこと言えるんだ。月永先輩はなんとも思ってなくても、私は勘違いしてしまうじゃないか。…自惚れてしまうじゃないか。
「ちょっと待ってろ!服についた落ち葉払うから」
「早くしてくださいね。私寒いんですから」
バサバサとブレザーについた落ち葉を払う音を聞きながら両手に息を吹きかける。だけどこんなんじゃ温かくなるのは一瞬だからあんまり意味ないかもしれない。やっぱり手袋は必要だな。手に息を吹きかけていると、ブレザーについた落ち葉を払い終わったのか月永先輩が私の目の前まで歩いてきた。
「そんな寒いか?」
「寒いですよ。…それより、頭にまだ葉っぱついてますよ」
このまま隣を歩かれるのはちょっと恥ずかしいのでついた葉っぱを取ってあげていると、何を思ったのか月永先輩は私の両手を片方ずつ握った。いきなりの事でぽかんとしてしまっている私を気にせずに月永先輩は話しはじめた。
「ホントだ冷たいな。今まで何してたんだ?あ、いや待って言わないで!妄想するから」
両手を離さないまま妄想を始めてしまった月永先輩。月永先輩の手、思ったより大きくてそして温かかった。この手、握り返してもいいだろうか。
「あ!そうだ!」
「?なんですか?」
手を見つめて、結局握り返せないまま月永先輩が発した言葉に視線を上げる。目が合うと先輩はヘラッと笑って繋いだままの手を自分のポケットに突っ込まれた。
「ちょっ、つつつ月永先輩!?」
「こうした方があったかいだろ?」
「あったかいですけど、は恥ずかしいです」
ポケットに手を入れてるわけだから、距離がグッと近くなって、目を合わせるのも少し恥ずかしいから視線を逸らしてしまう。ドキドキしてるの聞こえてたりとかしないかな。顔とか赤くなってないかな。
「……これじゃ帰れない、ですよ」
向かい合わせで生まれた少しの沈黙に気まずくならないうちに、話しを続ける。だけど、月永先輩の返事が聞こえて来ないから不思議に思ってチラッと見たら、パチっと近い距離で目が合ってしまって頬に熱が集まってきているのがわかった。
「そ、そうだな!これじゃ帰れないな!」
ポケットから手を出してゆっくりと手を離して少し距離が出来た時に、月永先輩の頬も少し色付いていることに気づいて心臓がキュってなった。
「それじゃ、帰るか。もう遅いから家まで送って行くからな」
「あ、ありがとうございます」
結局両手は自由になってしまって、さっきまで熱いくらいに温かかったはずなのに一気に寒く感じてしまう。もう一回、手を繋いでもいいだろうか。今度は右手だけで。それでちゃんと握り返したい。先に歩いて行ってしまった背中を見て意を決めて、隣に並んで空いてる左手を捕まえる。
「右手だけでもあっためてください」
「…ははっ、いいぞ。なんか今ならいい曲が書ける気がする!」
「私と一緒に帰るのが先ですからね!」
ポケットから笑い声
(手袋はまだいらないかな)
戻る
NEVER LAND