02



持って来たリンゴは見事に完売して、売り上げは上々だ。この売り上げ金なら、泉さんも納得してくれるはず。なんて浮かれながら帰りの道を歩いていると、砂をざりざりと音を立てこちらに向かって黒い影が歩いて来た。少し帰りが遅くなってしまったらから灯りが無く、町はずれの山道だから月の光も届かない。でも、私はそれが誰なのかすぐにわかった。


「おいーっす、リン」
「ただいま、凛月くん!見てみて!今日はこんなにたくさん売れちゃった!」
「ふーん…、昨日よりは全然マシだね。よかったじゃん」


でもお金無くて困るのリンと王さまだけだからねぇ〜。と言って欠伸をする凛月くんは、何年か前に出会って一緒に暮らしている人間ではない者。額から二本の角を生やした鬼である。


「眠そうだけど、今起きたんですか?」
「まあね。この時期は特に眠くなるんだよねぇ〜」
「春眠暁を覚えずって感じですか?」


とは言っても、凛月くんは年中眠そうにしているから、睡眠の春夏秋冬って感じだろうか。


「んー、元々俺は夜行性なんだよねぇ。リンと違って人間じゃないわけだし」
「でも泉さんは眠そうにしてる事あんまりないですよね?」
「セッちゃんは鬼じゃなくて、妖怪だから妖力使わなければ寝なくても平気なの。それにリンが町に行ってる間はセッちゃんも寝てるしね。リンが知らないだけで」


きっと、私が知らないのは泉さんのお昼寝だけではないはず。泉さんも凛月くんも多くを語る人ではないから、私が知らないだけで私のためにきっと色んな事をしている。それはもちろんレオさんにも言える事だけど、レオさんは2人とはちょっと違う。


「レオさんは、また剣の稽古ですか?」
「んー、まだ出かけてないみたいだけど?リンの事待ってるんじゃないの」
「それっ!早く言ってください!!もう、レオさん気まぐれだからもういないかもしれないじゃないですかっ!!」


うだる凛月君の手を引いてレオさんの待つ社へと走る。暗い山道も私にとっては庭みたいなものだから、山奥のもう人に使われていない社へ行くのに迷う事はない。幼い頃はレオさんと一緒に何回も迷って、その度に泉さんが文句を言いながらも迎えに来てくれたっけ。


「リンは、本当に王さまが大好きだねぇ」
「家族みたいなものですから、好きですけど…いつも思ってたんですけど、なんでレオさんの事王さまって言うんです?」
「ん〜、なんとなく?」


絶対なんとなくの理由じゃないのに、きっとこの先も教えてくれないんだろうな、と凛月の笑顔を見てそう思った。




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