03



あれから暫くもなく社に着くと、凛月くんの言った通りにレオさんの普段履いてる草履もお仕事用の下駄もどっちもあった。という事は、レオさんは出かけてないって事だ。


「ただいま帰りました!!」
「本当…走るの速すぎ…」
「おかえり、リン。遅かったな!」


廊下を走り辿り着いた襖を開けると、泉さんと机を挟み向かい合っているレオさんがいた。レオさんと言葉を交わすのはこれが3日ぶりだ。朝に寝ているレオさんは見ていたけど、やっぱりお喋りしないと一緒にいるって感じないよね。凛月くんの手を放してレオさんの隣に座る。凛月くんは欠伸をして部屋の隅に行って寝てしまった。


「今日はもう出かけないんですか?」
「……。…んー?そうだな、暫くは出かけないかな。おれがいないと寂しいだろ」
「寂しくはないです!」
「…、はいはい。とりあえずリンは手を洗って来なよ。転んだんじゃないの?」


着物に土がついてるんだけど。と私の膝辺りを指差して眉間にシワを寄せて指摘する泉さん。きっと朝、朱毛の男の子とぶつかった時についたままだったんだな。このまま居てもまた泉さんに怒られてしまうから、素直に手を洗いに行こう。そう思い渋々立ち上がるとレオさんに名前を呼ばれた。


「お土産あるからさ、おれの部屋から風呂敷持って来て!一緒に食べるだろ?」
「食べます!!やったぁ!」
「廊下は走んないでよねぇ」


▼ ▲ ▼


「それで?やっぱりもう限界な感じなの?」
「なんだ、まだ起きてたのかリッツ」
「まぁね〜。一応心配だし?」


リンが出て行った後、寝返りをうってこちらを向くリッツ。リンが部屋に入って来る前に隠した紙の束をリッツに渡す。


「もう限界。そろそろ自分で制御してもらわないとこっちの力が持ってかれる」
「じゃあ、俺が霊力吸っちゃおうか?」
「ダメだ!それは絶対ダメー!!」


サラッと言ってのけるリッツだけど、霊力を吸うという事は血を吸うという事、鬼のリッツがリンの血を吸うという事は今後リッツはリンの血しか受け付けなくなるという事。それは絶対に許す事は出来ない。


「そんな睨まなくても、冗談に決まってるでしょ。リンの血なんて飲んだら俺の方が霊力に当てられる」
「ホント厄介な力を与えられて大変だよねぇ〜。人間なのにさぁ」


そう、それなのだ。リンは鬼ですら慄く霊力を人間の身体に宿している訳なのだ。今はセナが呪いを掛けて霊力を押さえ込んでいるが、その呪いももう直ぐリン自身の霊力で打ち破られそうなのだ。


「レオさん!お土産ってこの風呂敷でいいですか!?」
「ん〜?おぉ、それそれ!」


セナに言われた通り、廊下は走らないで来たのか静かに開けられた襖からリンが顔を出した。手には今日貰った菓子が入った風呂敷がある。


「リン、おいで」


席を立つ前に座っていた場所を叩いて座るように促す。それに嬉しそうに顔を綻ばせて、おれの隣に座るリンは贔屓目無しに可愛らしい。


「団子、好きだよな?」
「はい、わっ!みたらし!!」
「着物に付けないでよ」
「セッちゃんお母さんみた〜い」


この4人の生活ももう約十年になる。最初はセナと二人だったが、リンが増えてそしてリッツが増えた。もうリンに伝えていい頃合いなのかもしれない。




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