目を覚ますといつもと違うが馴染みのある天井が見えて、昨日の夜あのまま居間で寝た事を思い出す。居間で寝たのに風邪を引かなかったのは、すぐ隣で寝てるリンとかけられた布団のおかげだろう。というかリン、おれのこと抱き枕と間違ってるんじゃないのか、これ。
「…別にあったかいからいいけど」
体は動かさないで頭だけ動かして部屋を見るがセナもリッツもいないようだ。今は朝でいいのだろうか、もしかして寝過ごしてしまっていたりするのだろうか。でももう少しだけこうしていても、いいよな。
「ごめんな、リン…」
リンに封魔の呪いをかけるよう、セナに頼んだのはおれだ。そうすればリンは普通の女の子として暮らせると思ったから、セナの封魔の呪いよりもリンの力が大きくなるなんて思わなかったから、それでリンが幸せになれると思ったから。最初からリンにちゃんと言っておけば、良かったのかもしれない。今となっては後の祭りというものだけど。
「ちょっとぉ!アンタ達いつまで寝てんの?」
「んー……やだ、もっと寝たい」
「くまくんみたいな事言わないでよねぇ!敷布団敷いてないんだから、身体痛めるよぉ?」
廊下を音を立てて歩いて来て襖をスパンッと勢いよく開けて、おれたちを起こしに来たセナは寝てるおれたちの枕元まで来て仁王立ちして見下している。セナは綺麗な顔をしているから睨むととても凄みが出る。というか、怒るとネチネチ小姑みたいに嫌味を混ぜて説教してくるから出来るだけ怒らせないのが得策である。
「リンも早く起こして、布団片付けなよ」
「ん、布団ありがとな、セナ!」
「まったくだよねぇ」
入って来たときと違い静かに出て行ったセナを見届けたあと、ユサユサとリンの肩を揺する。おれを抱き枕と勘違いしてる(と思われる)リンは、おれの胸に顔を押し付けて起きる気配がない。なんなんだ、こいつ。かわいい。
「起きろー!またセナが怒るだろ」
「……ん…、…レオさん……」
「…おい、リン……!?」
「たすけてー…」
助けを求める声と同時に呪いで封印されてるはずのリンの力が溢れてきて、ただでさえ古い社の襖がガタガタと悲鳴をあげている。きっとセナとリッツも異変を感じてすぐにでも来るだろうが、それを待ってる余裕はない。
「リン!!リン起きろ!!」
そろそろ呪いも限界だと知ってはいたが、こんな早くに限界が来るなんて思わなかった。力を制御出来てないリンが一番自分の力に当てられて辛いだろう。おれも中々耐えている方だと思うから、褒めてもらいたい。
「…っ!リン!!」
「…………………レオ、くん…?」
リンがゆっくりと瞼を開けるのと比例して、溢れていた力が収まっていく。懐かしい呼び方をするリンに違和感を感じた。パチパチと瞬きを繰り返し、まだ覚醒していない頭でおれを見つめるリン。もしかして、と思ったのと同時にセナとリッツが部屋に入って来た。
「ちょっと!!今のってまさか…!」
「王様もリンもよく無事だったね〜。俺ここまで来るので限界…」
「…おはようございます、何かあったんですか?」
文字で表すなら、キョトンがしっくり来るだろう。騒ぎの原因だというのに、リンは何も感じていないようだ。それが違和感の正体。
「お前、自分に起こってる異変、気づいてないのか…?」
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