09



朝餉を終えた後、王様は早々に社を出て行った。リンはセッちゃんに追い出されて渋々ながら社を後にした。王様がリンにまだ何も伝えていないから、リンを追い出したのはセッちゃんなりの配慮なんだと思う。ここは元より神聖な場所、神を祀る場所だからそういう事をするのにはこれ以上適切な場所はない。


「セッちゃんは優しいねぇ」
「アンタには言われたくないけど」
「もう一度呪いを掛けてあげるんでしょ。手伝ってあげようか?」


この呪いの儀式を見たことは無いが知ってはいる。何が必要なのか、大体は把握している。いつもならこんな事は言わないし、手伝いなんて自分から名乗り出たりなんてしない。これが王様の為だったとしても、自分からは手伝わなかっただろう。リンだからだ。


「ホントにリンの事になると行動的になるよね、アンタって」
「まあねぇ、こう見えてもリンの事気に入ってるから」
「どっから見てもそうだよ」


でもさ、俺だけじゃなくてセッちゃんもリンのこと気に入っているのは、きっと皆知ってると思うけどね。俺と王様だけじゃなくて『皆』がね。


「満月の子の力は本当に厄介。俺の力でどうにかできるなんて思ってないけど、やらないよりはやった方がいいに決まってる」


セッちゃんは立ち上がると長方形の紙といつかの為に用意している短刀を戸棚の引き出しから取り出した。そして短刀を聞き手の人差し指に刺して紙に血を染み込ませる。セッちゃんの血は紙に染み渡ると勝手に紋章が浮かび上がる。


「あーあ、痛そう」
「痛いに決まってんでしょ」
「ふふ、セッちゃんの顔が歪むなんて札を作る時くらいしか見れないからねぇ」


その札を作るのも滅多にしなかったのに、ここ10年の間はよく見るようになった気がするのは気の所為では無いはず。愛されてるなぁ、内の姫様は。




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