Dear. 羽並様

その日はイレブンが溜まったレシピを試したいと言って、鍛冶に専念する日になった。だからその日一日自由時間となったのだけれど、ベロニカとセーニャとシルビアみたいにスイーツを食べにとかショッピングとか何処かに出掛けたいわけでもないし、カミュとマルティナとエミリヤみたいにイレブンの為に素材集めるとか体が鈍らないようにとかで魔物退治に行くのもなんか違う。おじいちゃんは気づいたらいなかったから、ぱふぱふのお姉さんの所に行ったんだと思う。


「あれ、なまえは皆と一緒に行かなかったの?」
「……、行きたい場所がない」
「うーん、僕と一緒にキャンプに行ってもつまらないと思うけど、行きたい場所がないなら一緒に行く?」
「うん、そうする」
「あっ!いたいた、なまえさん!」


イレブンに着いてキャンプに行こうとしていると、魔物退治に向かったはずのエミリヤが戻って来た。何か忘れ物でもしたのだろうか、と駆け寄ってくるエミリヤを見ながらぼーっとしていたら、エミリヤは私の手を持ってイレブンを見た。


「イレブンさん!なまえさんを借りてもいいですか?」
「あ、うん。僕はいいけど…」
「なまえさん、私と一緒にお出かけしませんか?」
「…エミリヤが行きたいなら、いいよ」


私がそう言うとエミリヤは何故か嬉しそうに笑った。楽しんでおいで、とイレブンに微笑まれたので頷いてからエミリヤに何処に行きたいのか聞いた。だけど、エミリヤにとって私と一緒にいる事が目的だったらしく、具体的な場所の目的地は考えなかったと言われた。それならと、私はエミリヤが握ったままだった手を握り返し、ルーラを唱えた。


「ここは、ダーハルーネ?」
「うん。イヤだった?」
「いえいえ、そんな事は無いです!でもなんでダーハルーネなのかな、と」
「……シルビアがここには美味しいスイーツがあるって言ってた、から?」


私がそう言うとエミリヤは、「なんで疑問形なんですか」と笑いながらもその美味しいスイーツがあるお店に案内してくれた。そのお店はいつも皆で行くお店と違ってとても静かで、だけど無音ってわけじゃなくて音楽が流れていた。きっとこういうのをオシャレって言うんだろうな。お店の人に案内された席に座って、エミリヤがオススメしてくれたものを頼んで、運ばれて来た物もなんだかスッキリしていた。


「ここのお店、タルトが美味しいらしいですよ」
「前にセーニャと作ろうとして失敗したやつ」
「あー、キャンプでタルトはちょっと無理がありましたよね」


あの時は最終的に真っ黒になって食べ物にならなかった。カミュに食材を無駄にするなと怒られたのを覚えている。セーニャがすごく落ち込んでいたのをエミリヤは「次は美味しいタルト作ってカミュさんを見直させましょう!」と気遣っていた。


「いつもエミリヤは気付いてくれる」
「え?」
「前に私がこの近くで熱出た時も、エミリヤが最初に気付いてくれた」
「それはたまたまですよ」


初めての熱で自分の不調に気付いてなかったから、エミリヤが気付いてくれなかったら私はもっと苦しい事になっていたかもしれない。イレブンにも「後でちゃんとお礼言わないとね」と言われていた。遅くなってしまったけど、命の大樹に着く前に伝える事が出来てよかった。


「ありがとうエミリヤ。いつも気付いてくれて」
「どうしたんですか急に!」
「急じゃないよ、ずっとありがとうって言いたかった」


エミリヤはほっぺを赤く染めて、すごく恥ずかしがっていた。エミリヤのコロコロ変わる表情を見ているのが私は好きだ。ベロニカともセーニャともマルティナとも違う明るくて優しいお姉さん。


「これからもよろしく、エミリヤ」






君は既に祝福の途にある
帰ったら今日の事をシルビアに報告しないと。

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