「絶対嫌」
「そこを何とか…」
「嫌ったら嫌」
コムイがむつきの部屋に入って来てからかれこれ数十分、コムイとむつきの両者一歩も引かない言い争いが続いていた。
むつきは救護室のベッドの数が足りないからと自室のベッドの上で療養していて、現在は暇だからと本を読んでいる途中だった。
そこに「お見舞いに来たよ」と花束を持って現れたのがコムイで。暫くは他愛の無い話をしていたのだが、急にコムイが「実は折り入って話がある」と真剣な顔付きで話し始めたのが、むつきに元帥になって欲しいという話だった。
ここ数年、何度かそういう話が持ち上がっていたのだが、事ある毎にむつきは話を逸らしたり今の様に断固拒否していて、その度にコムイもあっさりと引いていたのだが、最近の事態が事態な為に今回は断っても一歩も引かない。
「嫌って言われても、上からの命令なんだよ。
むつきちゃんは教団に長い事居る訳だし、能力だって他の元帥達に引けを取らない。それに、イエーガー元帥の事もあるし…」
「…」
「それに、元帥になれば教団の深層部を知る事が出来るかもしれないよ」
「それは、そうだけど…」
「お願いだよむつきちゃん。
僕としても、君が僕と更に近い存在になってくれる方が心強いし…ね?」
そう言ってコムイは、むつきの包帯にくるまれていない方の手を取って困った様に微笑んだ。
若干むつきを見上げる形になっているコムイに、むつきは「三十路男が上目使いとか…!」などと思いつつ、その光景に胸がキュンとしてしまったのはここだけの話だ(絶対に口には出さないけれど)。
「〜〜〜…分かったわ、引き受けます!引き受ければ良いんでしょう!?」
「!むつきちゃん」
「た・だ・し!絶対弟子取るとかめんどくさい事しないから!育ててとか言われても一切手出ししないから!…それだけは了承して」
「う…うん、分かった。でも嬉しいよ、やっとむつきちゃんが元帥になるって決意してくれるなんて!今日はプチ祝賀会を上げなくちゃ!」
「しなくて良いから。
というか、勘違いしないでよ!私は後々文句言われるのが嫌だから元帥になるだけだからね!」
「はいはい」
まるでむつきが何を考えているかが分かっている様にニコニコと笑うコムイに、少し苛ついたむつきは渾身の頭突きを食らわせたのだった。
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