ある日突然、異質とも言える二人がやってきた。
「あなた方が、「ブックマン」の血筋の方ですね。
ようこそ黒の教団へ。科学班室長のコムイ・リーです」
そう言い朗らかな笑みを見せながら手を差し出して来たのは、ひょろりとした長身の頼りなさ気な男だった。
見た目がまんま「自分インテリです」と語っている。
そんな男コムイに、ジジィが自分の名前を名乗り軽い挨拶をして握手をしている。
そんな雰囲気とは裏腹に、オレ達の眼下には幾つもの棺と、それに縋り付きながら涙を流す奴らが映る。
オレ達のこの雰囲気が場違いなのだと言うのが一目で分かった。
(棺…葬儀中か。ざっと見、百はイッてっかな。生きてる方もケガ人だらけ、消毒液の臭いがぷんふすら。こりゃー…)
「「負け戦」だねぇ…」
ボソリと呟いた言葉は、誰にも届く事なく空に消えた(ジジィには聞こえてたかも)。
そんな時、沢山の白の中に一つだけ、黒を見つけた。
その黒が視線を空にさ迷わせた事で、ソイツの顔が分かる。
オレよりも年下だと分かる顔つきの、華奢な身体の女の子…だった。
痛々しく巻かれた包帯やガーゼが、彼女の肌の白さを更に際立たせる。
その姿に魅入ってしまうと同時に感じたのは、彼女への悲哀かはたまた愛執か…。
その後、コムイに名前を聞かれて意識が戻ったオレは、やっと浸透してきつつある49番目の偽名である「ラビ」を名乗り、握手を交わした。
…と、突然、誰かのしっとりとした歌声が耳に入ってきた。
よく聞いてみるとソレはまるで死者の気持ちを代弁している賛美歌のようで、ゆっくりとこの部屋全体を飲み込んでいく。
すると徐々に、嗚咽や啜り泣く音が消えていき、殆どの人間が天を仰ぐ。
きっと、死んだ者達への鎮魂歌なのだろうと、聞きながら呆然と思った。
(誰が唄ってるんさ?)
そんな好奇心から眼を凝らし辺りを見回してみても、唄っている人間の姿は見えなかった。
- - - - -
「ラビ」は49番目の偽名。
偽名の数だけ、戦いは観てきた。
「裏歴史」とは、語り継がれる人の歴史から除外された史実。
「誰も知らない事実を知れる」
それだけで、オレは「ブックマン」になることを受け入れた。
だが、
「どこへ行っても戦・戦・戦。人間がバカだってことは、よくわかったさ」
「………ラビ。波風たたんようにせえよ」
「へいへい、当分の寝屋だしね。いつもみたいにヘラッとして 仲 良 く なるさー。
しかし汚ねーなココ」
「司令室だ」
もとより仲良くなる気はなかった。
潜伏期間が長くなるとは聞いているが、今までのより少し長くココに居るくらいで、仲良くなる暇もないと予想してみたうえで、笑ってジジィの言葉に応える。
そんなオレ達は今、世界中から集めたような本の数が、バカ高い本棚に収まっている。
そんな本棚と床に散らばった大量の書類らしい物に囲まれて、ぽつんとソファに座ってコムイを待っていた。
これから割り当てられる部屋を教えてもらったりするらしい。
(早く終わんねーかなー。…寝たい)
と思っていると、司令室の扉が開いた。
コムイが入ってきたのかと思ったら、全然違った。
さっきの少女と同じような真っ黒な服に身を包んで、所々に怪我を隠すように包帯やガーゼを纏っている。
先ほどの少女と違うのは、大人の女性という所。
包帯の下からでも分かる大人の色気に、頭を銃で撃ち抜かれた音がした。
不謹慎だけど、ドストライク!
「コムイ…は居ないか」
「そなたもエクソシストか?」
ジジィが話し掛けたことで、お姉さんはオレ達の存在に気付いたらしい。
バインダーを放り、高々と詰まれた書類の上に器用に着地させると近付いてきた。
「はじめまして。あなた方もエクソシストですか?」
「ああ、今日入ったばかりでな。ブックマンと言う、宜しくの」
(!…ブックマン。文献で読んだ事あるけど…本当に居たのか)
「…私はむつき・藤崎です。宜しくお願いしますブックマン」
「で、こっちがバカ弟子の…」
「ラビっす、お姉さん超ドストライク!オレと付き合ってよろしく!」
「お断りよ。会って早々何言ってんだ舐めんなよ」
と、お姉さん基、むつきの回し蹴りがオレの首に華麗に決まった。
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