俺達には歳の離れた姉貴兼母親代わりのような存在のむつきが居る。
といっても全く血は繋がってねえけど、小さな頃から世話になってるから肉親と言ってもいいくらいだ(元々血繋がってんのは雪男くらいだし)。
俺が流血沙汰を起こしてオヤジが仕事で地元に居ない時は、大抵教会の奴らは俺が怖いのかあんまり来なくて、代わりにむつきが来ていた。
学校に直接連絡が行くのか教会の奴らが携帯に掛けんのかは知らないけど、むつきが中学生の時も高校生の時も授業中なのに駆けつけて「すいません」と何時も頭を下げてた(高校は確か了解がないと外に出られなかったはずだけど)。
無理矢理頭を下げさせる所はオヤジそっくりだった。
そのまま怒りに任せて骨折っちまったり傷付ける事も多かったのに、むつきが俺に対して怒る事は一度もなく終始へらへらと笑っていて。
そんなむつきにバツが悪いと思ってふてくされながら、何で怒んないのかって一度聞いた事がある。
そしたら
「私、怒るの下手なんだよね。
それに私の代わりにその人を怒ってくれる人が居るし、良いかなって」
って、間抜けな答えが返ってきたのを覚えてる。
その時は変なヤツって言って終わったけど、ずっと怒らないっていうのは難しい事だと思う。
すぐキレる俺みたいなヤツなら尚更。
だから、後ろから見たむつきの背中が、オヤジほどじゃねえけど大きく感じた。
そんな背中が、最近小さく見えるようになった。
それは俺の背がデカくなったのもあるし、きっと心情の変化もあると思う(あんま変わってないってよく言われるけど)。
あの小さい背を見る度に、俺ももういい歳だし、背格好だってひ弱じゃない。
だから守られてばっかじゃなくて、今度は俺がむつきを守るんだって、少しでも恩返しがしたいって思う。
…まぁ、何でかいっつも空回りで終わるんだけど。
「ごめーん燐、ちょっと手伝ってー!」
「んー」
あの小さな背中を守りたい。
でも、まだ俺に力はない。
だったら今は力を付けるために頑張って修行していかなきゃな。
- 16 -
← →
dream
top
ALICE+