いつもどおりの朝

爽やかな朝の眩しい朝日は寝起きの顔にはもはや凶器でしかないと思う。それが連日の睡眠不足の顔へなら尚更だ。


「…っんぅ…まぶ、しいっ」

そんな朝日への恨み言を溢しながら紗良はベッドから身を起こした。
カーテンを閉め忘れそのまま寝てしまった自分の落ち度ではあるもののこれはキツイ。今にも閉じそうな瞼を揉み解しながらふと、先ほどまで見ていた夢を思い出す。すごく懐かしい夢だ。はじめてこの家に来た時の、そして新しい家族と出会った時の夢。



しばらく感傷に浸っていれば扉を隔てた反対側の廊下が騒がしくなる。ベッドサイドの時計に目を向ければとっくに準備をしていなければいけない時間で…。

「うっわやばっ」


紗良は急いでベッドから抜け出し手早く準備を一通り終わらせたらスリッパを鳴らしながら一階にあるキッチンへと向かう。




「ごめん新一朝ごはん!」
「おーおはよ、トースト焼いたから心配すんな。コーヒー飲むか?」


我ながら良くできた弟である。ダイニングテーブルにトーストを淹れたてのコーヒーを置いてくれる。料理は苦手なくせにコーヒーは淹れられるのかと今更なことを考えつつ椅子に座って手を合わせる。いただきます。


「めずらしいな、寝坊するなんて。」
「ああ、昨日遅くまで研修の時使う資料作ってたからね…、あと荷造り。」
「そういや明日出発だっけか?海外研修。そんなのにまで行かなきゃいけないって大変なんだな非常勤講師つっても。」
「非常勤だから正職の人たちよりも研修とかに避ける時間に融通が利くしね、わたしも嫌ではないし…。」


欠伸を溢しながらそう言えば、苦笑された。…弟に心配される姉とか示しがつかない。



「非常勤だからこそしっかりやっとかないとね、いつクビ切られるかわかんないし…新一だって昨日は事件解決してきたんでしょ?あんたもよくやるわねぇ。」
「まあな!なんたって今世間を騒がせる高校生探偵だからな!」

そう言って取り出した新聞の一面には新一の顔写真と名前で、それを見せつけてくる当の本人は得意げだ。この目立ちやがりやは誰に似たのか。


「はぁ…好奇心旺盛なのも結構だけどほどほどにしなさいよ?行き過ぎた好奇心は身を滅ぼしかねないんだから…。」
「わぁーってるよ、久木せんせ?」
「まったく!ほら、そろそろ出かける準備しないと遅刻するよー工藤くん?」
「あ、やべっ」
「じゃ、わたしは先に行くから遅刻しないよーに!」


ちゃっかり片付けと準備を済ませ、玄関へと向かえば背後から慌てたような声が聞こえるが無視する。






ああ今日もいい天気だ。
何気ない日常がまた今日もはじまる。




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