Note
拍手お返事
9/20に拍手をくださった方へ。返信不要だなんて、そんなそんな!少しだけですがお返しさせてください。
そして前ジャンル(pkmn)時代から私の作品を見てくださっている皆様へ。
ほんのちょっとの気持ち程度ですが、未公開のものがありましたので、よろしければ追記からどうぞ。
■9/20に拍手をくださった方
拍手コメントありがとうございます。
もうびっくりしすぎて、スマホ投げてしまうかと…
pkmn時代からご覧いただき、誠にありがとうございます。
懐かしさのあまりに自分でも読みに行ったのですが(ミュウツーの話ですね)、なかなかの熱量でした。
もう10年ほど前の作品ですので荒いところも多いのですが、今でも楽しんでいただけているとのこと、とても嬉しく思います。いつか作品を動かすことがあれば、その時はお知らせしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
また、ジャンル外にもかかわらずツイステの方もご覧いただきありがとうございます。
ツイステも素敵な作品なので、好きになっていただけたら私も嬉しいです!
また、お気遣いもありがとうございます。ご心配をおかけして申し訳ありません。
現状ですが、今はここ半年で一番元気がいいです!ツイステの本を出すべく留守が長いですが、楽しく創作は続けていますのでご安心くださいませ!
何のお礼にもならないかもしれませんが、(多分)未公開の文章を掘り出してきたので、こちらに掲載します。
かなりの季節外れですが、少しでも楽しんでいただけましたら幸いです。
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ぼとり、と砂袋が落ちたかのような音がする。
ミナトはハッとして箒を握り直した。
何かが落ちたのだろうか。見渡すものの、それらしきものはない。がらんどうのポケモンセンターには、熱心に掃いただけあって塵ひとつ落ちてはいなかった。
(まぁ、誰も褒めてくれる人はいないんだけど)
代わりに落ちたため息すら、誰も拾ってはくれないのである。
思い返せば昨日から夜勤で夜通しポケモンセンターにいるが、利用者は一人も来ていなかった。
というのも世間は数日前から年末年始の休みに入り、ポケモンリーグも当然休みになっている。セキエイ高原のような人里離れたような場所に、何もなしに訪れる人はいない。
ここ数日で人の声を聴いたのは、一緒に働くジョーイと話す時か、テレビを観ている時くらいのものだった。例年通りといえばそうなのだが、普段の賑やかさを知ると少し寂しくなる。
受付の近くに備え付けられたテレビから「あけましておめでとうございます」と明るい声がした。
そういえばいつの間にか新しい年になっていたんだった。
「ちょっと外の空気を吸いに行こう……」
ミナトは思い立ち、外へ向かった。生憎まだ空は眠ったままだが、時刻は早朝と言っていい頃合いだ。遠くから薄く光が差しているから、すぐに朝日が姿を現すことだろう。
自動扉を開けると、冷たい空気が肺いっぱいに広がる。凍えるほど寒いが、暖房で温まりきった身体にはちょうどよく、清々しいくらいだった。
「わ、雪だ」
そしてミナトは雪明かりに照らされる一面の景色を前に、感嘆の声を上げた。
足元にこんもりと積み重なった雪の塊は、少し押せばほろりと崩れるほど柔らかい。どうやら先ほどの音は、この雪が屋根から落ちた音らしい。
(ポケモンたちに朝ごはんを食べさせたら雪遊びしようかな。チィとハチは大喜びだろうけど、リタは……嫌がるだろうなぁ……)
自然に緩む頬を隠しもせず、雪を足先で弄る。 雪遊びはいくつになっても心が躍るものだ。
そういうわけで、まさかここに自分以外の人間がいるなどとは、到底思っていなかったのである。
「おはよう」
「わっ!」
ミナトは突然の挨拶に驚いて飛び上がった。
「お、おおはよう、ございます!」
自分の白い息と暗がりのせいで姿は見えなかったが、おおむね検討はついている。その声を知らない人なんて、この地方に一人か二人いればいいくらいだ。
「ワタルさん、早いですね」
年末のお陰でリーグは休み続きだったものだから、チャンピオンの姿を見るのは久し振りである。相変わらず重苦しい真っ黒のマントを羽織っているが、今日ばかりは暖かそうだ。
ワタルが来たということは、リーグもそろそろ再開されるのだろう。人一倍熱心な彼のことなので、リーグメンバーの中で一番乗りに違いない。
ミナトは数日前に会ったきりのカリンの姿を思い出した。カントー・ジョウトリーグの四天王たちはああ見えて真面目なところがあるので、そう間を置かずにリーグに戻って来るはずである。
ワタルは「キミ、寒くないのか?」と眉を顰めて赤い鼻を擦ったが、かと言ってポケモンセンターに入る気配もなかった。
ミナトは自分の姿を見下ろした。指摘された通り、少し厚手のカーディガンを羽織っているくらいで、下はいつものジョーイの制服だ。つまり、半袖である。
そういえば寒いと思い始めた頃、ワタルが先に口を開いた。
「フスベシティは積雪が酷くてね。ろくに鍛錬もできないから早々に出てきたよ」
「そういえば、ワタルさんのご出身はフスベでしたね。あちらはよく積もると聞きました」
「この時期はね。キミは今日から仕事かい?」
「いえ、ずっと仕事でここに」
ミナトがそう返すと、ワタルは渋い顔をした。年末年始の時期に誰も訪れやしないだろうに、律儀に働いてるのを不憫に思ったのだろう。生憎ポケモンセンターは年中無休、24時間全国どこでも開いているのが当たり前だ。
「あぁでも、時期を変えて私もお休みをいただく予定です。私は実家と呼べる場所がないもので、いつ休んでも同じなんですよね」
ぼんやりと父親の姿を浮かべて、ミナトは苦笑した。あの人は仕事と休みの境が曖昧だから、年末に会いに行っても朝から晩まで研究をしていることだろう。
「そうか。では休みの予定は?」
「え?」
問われて気がついた。そういえば何も計画を立てていなかった。
かといって行きたいところが特にあるわけでもない。
「いつも通り、うーん、コガネシティに買い出しに?」
「……他には?」
ワタルはどこか怪訝そうな顔をしている。
これではまるで友達もいない、予定もない悲しい人間のようではないか。
何が何でもひねり出したい。何かあるはずだ。例えば、そう――
「――ヒェッ!」
「うわっ」
せっかく良い計画を思いついたと思ったのに。
ミナトはぶるぶると頭を振った。屋根から降ってきた雪に気を取られて、内容が飛んでいってしまった。
刺すような寒さを感じながら恐々と隣にいるワタルを見上げると、彼も被害を受けたのか、黒いマントに白い粉を纏わせている。
「参ったな。ここも寒すぎる」
鬱陶しげにマントを揺らして雪を落とすと、ワタルはミナトの頭を軽くはたいて、背中を押した。さっさとポケモンセンターに避難したいようだ。
「ふふ」
「ん?」
「いえ、こんなに寒いんじゃ、ドラゴン使いもお出かけは無理ですねぇ。ドラゴンタイプなだけに」
なんせドラゴンタイプは寒さに弱い。
人間はもとより、ポケモン達だって嫌なはずだ。
「それは心外だな」
ミナトが先ほどの話題を上手く誤魔化せたと満足している一方で、ワタルはニヤリと笑った。
「よろしい。では次の休暇は予定を空けておくように。極寒のフスベシティ満喫コースといこうじゃないか」
「うげっ」
「寒い土地で鍛えられているからフスベのドラゴンは最強なんだ。身を以て思い知るがいいよ」
「不穏なこと言わないでくださいよ!?」
フスベシティにも観光地はあるが、あえて冬に行く場所ではない。
絶対次の休みを知られないようにしなければ……そう強く決心しながら自動扉の前に立った時、ガラスに強く光が反射した。振り返ると山々の隙間に朝日が顔を覗かせている。一面の雪が呼応するように輝いて、銀世界が姿を現した。
ミナトはふと、ポケモンセンターを出る前にテレビで言っていたことを思い出した。
「そういえば、ワタルさん。あけましておめでとうございます」
「あぁ、おめでとう。今年もよろしく」
せっかくだからコーヒーでも煎れて、休暇中のことを聞いてみようか。
もしかしたら、今年は例年より賑やかな正月を迎えられるかもしれない。
ミナトは幸先の良い新年の幕開けに期待を膨らませた。
「ええ、今年もよろしくお願いしますね」
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「そういえば、満喫コースって何をするんですか?」
「……滝行とか?」
「遠慮しときますね……」
(2023.09.23)
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これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!
2023.09.23