3と6





「もう、君には会えない」




それは突然だった


彼が仕事で帰らないことなんてしょっちゅうあったし


それが寂しいと言えば嘘になるけど



仕事なんてほっといて会いに来てなんて言えるほど


素直な女でも私はなかった。





会えないって、お別れってこと?


もう一生会えないってことかな




あなたもひどいよね



恋人の季節に、人肌がうんと恋しくなる季節にそんなこと言うなんて


大きなイベントもあるし、なによりあなたにぴったりの季節に別れを言うなんて


冬にお別れってさ、寂しくて悲しくてきっと私は立ち直れないから


せめて春にしよう


でも春の陽気に当てられたらあなたもきっと言いづらいだろうから


夏にしよう


涙も汗に紛れるから。でも、暑いのは嫌だなぁ


だから秋にしようよ


地下鉄の改札であっさり告げられた別れに私はついていけなかった


「........スティーブン」


「ナマエ、さようなら」



足早に彼は言ってしまった。
これで私たちは終わったのだ






「ふざけんな」


言えなかったなぁ


おもえば後悔は2つくらいしかないな


あなたに買ったこの高い腕時計の行き場がないこと


それを渡すデート用に買った服を見せる相手がいないこと


どうしてくれんのさ


それでも、言えなかった



別れの言葉を聞いた時



ショートしたように頭がパンクして


もう会えない


の通り、あれ以来スティーブンを一度も見ていない


職場の前をわざと通ってみたりお気に入りのベイカーへ毎日通ってみたり


それでもあなたに会えないのは


そういうことなのだろうか




あなたと居た3年で私は半生分の幸せと一生分の後悔だけが残った


それでも私は


またあなたに会いたい。





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ライブラを隠し通したスティーブンの悲しい話