かごめかごめ

御注意

本編には以下の要素が含まれます。苦手な方はブラウザバックしてください。


ヤンデレ
近親相姦(兄×弟)
ちょろっとした孕ませ描写(最後にさらっと程度なのでそれ目当てで見られるとがっかりします)

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この地域の町には蛇神様の伝承があった。
その昔、怪我をした蛇神を当時住んでいた村娘が手当てをした。娘のお陰で傷も癒えた蛇神は彼女に感謝し、礼として娘の住む村を災害や災厄から守る事を約束した。それだけではなく、娘を気に入った蛇神は彼女を嫁に向かえ、彼女との間に子を成したのだ。
村を守ってくれる蛇神に村人達は大いに感謝し、崇め奉った。それだけではなく、山に住む蛇たちも大事に扱った。ぞんざいに扱って祟りを恐れたからである。実際、信仰を信じない者達が蛇を捕らえ、殺したりしたことが過去に何件か在ったらしい。だがそうした者達は不可解な死を遂げた。それは後世に伝承と共に伝えられ、それが蛇神への信仰を強めることになった。一方で、蛇神の血を引いた彼女の子供達を化身と見なし、そう遠くないうちに彼女の一家は影の支配者となった。そうして村は発展し、町へと至る。
そして、現在。
ツヅルはその蛇神の血を引く一族に生まれた。然し、何故かツヅル自身に蛇神の血は一切なかった。
逆に、ツヅルの二つ上の兄であるツヅリはとても濃く血を引いていた。まるでツヅルの分まで引き継いで生まれたかの様だと、誰かが云っていた。
親族達は当然、兄を持て囃した。長い時が経ち段々と蛇神の血が薄れていっている今、ツヅリの存在は一族に取って朗報だった。将来、彼が当主の座に就くのは必然だろう。
そうして一族の皆が兄を厚遇する中、反対にツヅルは親族の彼らから冷遇されていた。彼らは血が全てなのだ。蛇神の血を全く引かない己など、一族からすれば邪魔者で仕方ない。他所から婿入りや嫁入りをしてきた者なら兎も角、身内から出たとなれば当然の結果だった。
それ故に、ツヅルは養子に出される手筈だった。ツヅルもその件については全く不満がなかった。一族に、この場所に居心地の悪さを感じていたのだから。兄と別れるのは悲しかったが、この異常な家から抜け出せる事を喜んでいた。
……だというのに、養子の話は白紙に戻されてしまった。
無論、親族達に認められたわけではない。兄が引き起こした、あの事件の所為でそうせざる終えなくなったのだ。
代々、一族は執着心が強かった。それは蛇神の血が関係しているらしく血の濃さは関係ない。蛇の血を全く引かないツヅルには解らない感情だったが、少しでも血を引いていればそれは顕著に表れた。だからツヅルが養子に出されると偶然知った兄は何処からともなく現れた無数の蛇を操って伯父達を襲わせたのだろう。優秀であるあの兄が何故『力』を暴走させたのか解らなかったが、今となっては充分に理解している。彼の執着先が、己に向けられていた。ただ、それだけ。
その事件を切っ掛けに兄が変わってしまった事をツヅルは嘆いた。その悲しみも、一族からすれば、取るに足らない事であろうが。
何故なら一族にとってその感情は――当たり前のことなのだから。




まるで人身御供だと、自嘲した。

肌寒さに、ツヅルは目を覚ました。雪見障子から見る外はまだ朝日は昇らず薄暗い。随分と早く目が覚めたものだ。
隣の敷布団を見遣れば、どうやらツヅリはまだ寝ている様だった。暫くぼんやりと周囲を眺めた後、気怠い躯をゆっくりと起こした。隣の兄を起こさない様に静かに布団を畳み、障子を開ける。寒さに顔を顰めさせながら早朝の廊下を歩いた。女中の姿はまだ見当たらない。
ここは離れだ。母屋からかなり遠くにある。ツヅルは此処を檻の様に感じていた。兄にとってはおもちゃ箱かもしれないけれども。
流石に厨はないが、それ以外は全て離れの中にあった。簡易的な娯楽室、風呂に、厠全て。母屋に行かなくても全て済ませてしまう。それらは全て、兄の一声で改装され付け加えられたものだった。ツヅリは酷く、自分以外の人間がツヅルに触れるのを嫌がった。『あの日』以前はそんな事はなかったので、きっとあの出来事が切っ掛けなのだろう。嫌がった結果、自分も世話を受ける年頃であろうにツヅリが何もかも甲斐甲斐しく行った。当然、ツヅルに拒否権などない。何故ならその時にはもう、当主を引き継いではいないものの一族の中で一番は兄だった。その事について当主である伯父も何も言わず認めている。兄が黒を白と云えばそれは白になるのが当たり前の状況で、どう拒否できようか。
浴場に辿り着くと、帯を緩めて浴衣を脱ぎ備え付けのシャワーを浴びた。熱湯が降り注ぎ冷えた躯を温かめてくれる。ある程度躯が温まってくると、ツヅルは後孔へ指を滑り込ませた。そうして出された白濁を掻き出し、中から溢れ出てくるそれから目を逸らした。
不意に、兄が昔云った言葉を思い出す。
『――ツヅルが女だったら良かったのにねぇ』
そうしたら、『枷』が出来るのに。
酷く残念そうに呟いたのを今でも覚えている。あれは本気だった。話し方は甘いのに、言葉は毒で、呪いだった。
あの時の事を思い出して、ツヅルはぞくりと躯を震わせる。本当に、男で良かったと思う。……いや、大して変わらないか。結局上の連中が、兄を上手く扱いこなす為の『贄』にされるのは変わらないのだから。
充分に温まると脱衣場に戻って、浴衣を着直した。廊下に出れば、先程に比べて外は明るい。そんなに長居をしていたのかとぼんやり思いながらゆっくりと歩く。
ふと庭に視線を向ければ、そこには無数の蛇達がいた。木の枝に身を巻き付け、じっとこちらを見ている。蛇達は兄の『目』であり、『手足』だった。ツヅリは蛇達と視覚を共有が出来、彼らを自在に操ることが出来る。それが彼が生き神と呼ばれる所以で、ツヅリが蛇神の生まれ変わりではと噂される要因の一つだ。蛇を配下に置くなど、過去にも誰も出来たことがないのだから。
廊下を進む度、蛇達の視線が突き刺さる。その視線にはとうに慣れた。が、居心地の悪さには変わりない。早く彼が目を覚ます前に戻ろうと、足を速める。
「きゃッ!」
――然しそれも、丁度聞こえてきた小さな悲鳴と何かが割れる音によって止めざる終えなかった。まだ若い、同年代ぐらいの女の声。ここにやってくる女中は年配者が殆んどなのに珍しい。
ツヅルが音の発生源に向かうと、母屋と離れを繋ぐ廊下の前に予想通り同年代であろう若い女中がいた。彼女の周りには皿の破片と朝食だったものが落ちている。彼女はツヅルに気づくと、震えた声で言葉を紡いだ。
「ご、御免なさい……っ!へ、蛇がいましたので……!」
若い女中の視線が庭に注がれる。彼女の視線を辿らずとも、そこに蛇がいる事は解っていた。母屋の庭に蛇の姿はないから、間近に見て驚いたのだろう。蛇を祀るこの町に住んでいる者として有り得ない反応だが、その様子から最近こちらに引っ越ししてきたのかもしれない。
破片を拾いながらおろおろする女中を見て、流石に哀れになった。これぐらいならいいだろう。彼女の許へ近づき、破片を拾おうとしゃがんで手を伸ばす。
「――ツヅル!」
遠くの方、寝泊りしている部屋の方角から兄の呼び声が聞こえた。その声に、ツヅルも、若い女中も思わず手を止めた。嗚呼――急いで、戻らないと。
腕を引っ込めると、ツヅルは立ち上がった。女中が気掛かりだったがそうも言ってられない。彼女を残し、ツヅルは部屋へと戻った。きっと彼女のフォローは他の女中がするであろうから、問題ない筈だ。
障子を開けると、当然そこにはツヅリがいた。ツヅル、と咎めるように呼ばれる。ツヅルは黙って部屋の中に入り、障子を静かに閉めた。
「何処に行ってたの」
「……早く目が覚めたから、先に風呂行ってた」
「ふぅん?それにしては遅かったけど」
「……言わなくても、どうせ兄さんのことだから『視』てただろ」
どうやって、どうすればいいのか、もう解り切っている。だから引き込まれるままに、口を寄せた。
折角洗い流したんだけどな、と押し倒されつつ、ツヅルはそう思った。




ぬらりとした感覚が肌を打つ。それは首筋を這い、段々と下へと下っていった。それに快感を感じているのは確かだ。思わず身を捩るが、ツヅリは気にした様子はなくただ愉快そうに肌を弄んでいく。
「っ、ひッ」
その冷たい指が、胸の突起をまさぐった。指先で乱されて、躯が熱を浮かび上がらせる。あられもない声を上げそうになるのを、唇を強く噛んで耐えた。
「…ッ、ぅ…」
「こら、駄目。傷がつくでしょ」
気づいた兄がもう片方の手を伸ばし、指が口内へ割って入る。強制的に開かされた口から嬌声が飛び出し、羞恥からカッと頬を赤く染め上げた。
「ひっ、ぁ…、止め…っ、」
「え〜、どうして?ツヅルのここは嬉しそうだけど……」
そう言って、先程まで胸を弄っていた手が離され下半身へと伸ばされる。緩く立つソレに軽く指を沿わせると、軽く上下へと摩られた。
「ぁあっ!ひッ、ンぁ」
然し達するその瞬間、兄はあっさりと手を離した。え、と我に返り、残された熱に戸惑う。何故と顔を上げればにこやかに笑うツヅリと目が合った。
「だぁめ。まだ出させてあげない」
その言葉と共に、するりと何かが下半身に嵌められる感覚がした。さっと血の気が引く。視線を落とせば、予想通りそこにはリングが嵌められていた。
「え、は……?にっ、にいさ……っ!外し…ッ、ひっ! ぁっ」
抗議の声は、指が後孔へ滑り込んだ為に掻き消された。ローションで濡らしてあったのか、難なく迎え入れる。根元まで飲み込んだ指が内壁を解く様に動かされ、思わず腰が揺れてしまう。快感に喘ぎ息を洩らしながら、平和だったあの頃を思った。
兄であるツヅリのことは、好きだった。けどそれは親愛で、こういう関係になりたかった訳じゃない。別に兄だって、自分じゃなくてもいい筈なのに。ツヅリが誘えば誰だって喜んで足を拓くだろう。けど、何時だって、兄が求めるのは。自分だけだった。
「……ふぅん。考え事なんて随分と余裕だね?」
「え……、っ!ひっ、ンぁ、ああぁ…っ!」
不機嫌そうな声が上から落とされたと思った直後、中を掻かれる。何時の間にか指を増やされ、ばらばらに掻き乱すように動いていた。嫌だと身を捩らせると、やんわりと、けれども更に不満そうにツヅリが呟く。
「ほら、暴れないの。いい子だから」
「ッ…兄さ……、もう、」
じわじわと高められる情欲に、ツヅルは限界を迎える。理性が消され、彼を求めていた。
「……仕方ないなぁ。でも、こっちはまだお預けだよ」
欲望が後孔に押し付けられ、ゆっくりと侵入してきた。ゆったりとした動きで擦り上げられ、襲い来る快楽に躯を震わせる。
「ぁ、ひッ、あぁあ…っ」
――達したい。だがそれには戒めるリングが邪魔であった。
外して欲しい、と己を組み敷くツヅリを見上げる。息を呑む気配がしたかと思えば、腰を打ち付ける速度が増した。何故と思う暇もなく、湧き上がる快感にただ喘ぐしかなかった。
「は、なん、…ン、ぁ……、ひ、あぁッ」
中が生温かい飛沫で満たされるのを感じる。どうやら達したらしい。自分だけ出せないのがもどかしく、ツヅルは解放を乞うた。
「っぁ、あ…兄さんっ、イきた、んあ、は」
もう嫌だと、身を捩り戒めを解こうと手を伸ばした。が、伸ばしかけた手はあっさりと取り押さえられてしまい、その願いは叶わない。
「ねぇ、僕が知らないとでも思ったの?」
浮かぶその笑みに温度はなく、見上げたツヅルはぞわりと背筋を震わせた。
「お前が此処から出て行こうとしてるの、なんてね」
「――っ」
兄が哂う。
ツヅリが正式に家督を引き継げば、当主としての責務を果たさなければならない。そうなればずっとこの離れにいるわけにはいかなくなる。だから、逃げ出すにはその時を待つしかないと、そう思っていた。
「だからね、僕は『枷』が欲しかった。そうなればツヅルは逃げ出せないもんね」
「……、」
気まずさを感じ、ツヅルは咄嗟に視線を逸らした。何か、何か言わなければならない。……何を?ぐるぐるとツヅルが思考を巡らす中、それは落とされた。
「偶然だったんだけど、見つけちゃったんだよね。……ふふ。出来ないなら、出来る様に作り変えればいい。――ね。意味、解るでしょ?」
「っ……な、何言って……無理だ、そんなの」
何が出来ないのか、その意味は勿論理解している。理解しているからこそ、認めたくない。そんな事は自然の摂理に反している。出来る筈がない。だと言うに、躯は相も変わらず恐怖で震えていた。
「ははっ。ツヅルは莫迦だねぇ。こんな状況で僕が嘘を吐くとでも思うの?まぁ、そんなとこが可愛いと思うけど」
「嘘、嫌だ、兄さん……!」
必死に懇願するが、兄はそれを聞き流した。ツヅリが親指を噛み、指の腹から血が滴ると同時に何かの呪を唱える。ツヅルには何も出来ない。そのまま口内に親指を押し込められ、血を舐めさせられる。口にしては駄目だ。本能がそう叫んでいる。飲まない様必死になっていると、仕方ないなぁと呆れた顔を浮かべた兄に『名前』を呼ばれた。あぁ、駄目だ。それは『力』を伴っている。そうなればツヅルは逆らえない。躯の支配権を手放し、素直にツヅリの血を舐める。途端、ツヅルの躯に甘い痺れが走った。
「っ、ぁ、」
「んー、別に子供には興味ないんだけど……まぁ枷には丁度いいからねぇ」
だから、と再び律動が刻まれる。
「ひ、ぃ……あっ、ああぁっ」
縛めていたリング外された。堰き止められていた熱が溢れ出し、自身の腹を白く染め上げる。漸くの解放に、ツヅルはほぼ叫ぶように声を上げていた。
達した疲労感から意識を手放すその前に、ツヅリがにこりと笑って、甘く囁く。



「――頑張って、孕もうか」