さいしょのおはなし
第零章 旅立ち





むかしむかし

「マナ」というふしぎなエネルギーがある
とてもむかしのセカイのお話です


あるところに
「ロウ」という名前のカワイイ女の子がいました

キツネのような三角おみみ
青と白のモコモコ毛並み
そしてじまんのフサフサしっぽをもった
とても小さなケモノの女の子です

彼女は「冥界(地獄)」というとても暗いセカイの
はじのはじの、そのまたはじっこにある
小さな丘の上でのんびりと暮らしていました


冥界には「タマシイ」がやってきます


虹色にかがやく、げんきなタマシイもいれば、
にぶい灰色のタマシイがゴロンッと音を立てて落ちてくることもあります

虹色のタマシイはやがて「天界(天国)」と呼ばれる世界で人に生まれ変わるそうです
一方で灰色のタマシイはさわらない限りは地面に転がっている石ころと同じようなものでした

ロウはこの灰色のタマシイを「ヌケガラ」と呼んでいました


ロウにはかんたんな「仕事」があります
それはヌケガラを「消す」ことです

ヌケガラはなんの役にも立たないものです
でも、チョットでもさわれば、知らぬうちにいつか消えてしまいます

ロウは、冥界の中がヌケガラでいっぱいにならないように、ヌケガラをさわって消すお仕事をしていました


ヌケガラは食べることもできます

ヌケガラにはマナがたっぷりふくまれており、とても美味しいのでした

なので、ロウはヌケガラをさわって消さずに、いつも食べてばかりいました




ある日、ロウは近くに住んでいる「おじさん」のところへ遊びにいきました

おじさんはとても大きな白いオオカミです
そしてとても優しく、物知りなおじさんでした


おじさんの家につくと、おじさんはグーグーと寝ていました

ロウがてくてくと近づくと、それに気づいたおじさんは、大きくあくびをしてから笑顔で答えました
「やあロウ 今日もお話を聞きに来たのかい?」

ロウはおおきくうなずきました


おじさんはロウにいろんなお話をしてくれます


外のセカイ、「地上」のお話です

青い海、青い空が広がり、たくさんの人たちが暮らしている大きなセカイ、地上

いつしかロウは、じぶんも地上に出たいと思うようになりました


ロウはおじさんにそのことを伝えました

おじさんはまた、ニコニコしながら言いました
「そうだね…行ってみるといい」

ロウはしっぽをパタパタふって、よろこびました

「ロウなら次元のかべを越えられるはずだよ」

「いろんなことを知ってくるといいだろう」



そう言うと、おじさんはロウに顔を近づけました

「でも、これだけはおぼえて行っておいで」



「『知りすぎ』ないように気をつけるんだよ」



「地上には、知らなくていい『こたえ』もある」

「知れば知るほど、本当の『こたえ』に近づいて『知らなくていいこたえ』が分かってしまうんだ」

「それは、とてもこわいことなんだよ」


ロウはフンフンとうなずきましたが、おじさんの言う意味はよく分かりませんでした


「つらくなったら、いつでも帰ってきなさい」

おじさんはフワフワのしっぽで、ロウの頭をやさしくなでました

「ここがお前のセカイなのだからね」

ロウは大きくうなずきました




ロウはスゥッと、息を大きく吸い込みました

たくさんのマナがロウの体にたまっていきます
そして、おもいっきり吐き出しました


バリバリと地面が大きな音をたてて開きました

強い光がスキマから出ています
次元のトビラが開いたのです

ロウはおじさんにニコッと笑って
いってきます、と手を振ってあいさつしました

おじさんはまた、笑顔で答えました

「いってらっしゃい」


ロウはスキマの上に乗りました

体が光につつまれ
やがて、おじさんのすがたが見えなくなりました



「…そう、ここがお前のセカイなのだからね…」



第零章 完



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