朝、ジリリリリリとけたたましい音が鳴る目覚ましを止め、私を優しく包んでくれる布団から這い出た。
布団は素晴らしい。特に冬は外と布団の中の温度差により出るのが困難で遅刻する人も少なくは無いだろう。
だが今日は高校の入学式だ。初日から遅刻していたら評判ががた落ちに違いない。布団との別れは惜しいが、さっさと身支度をしていき、新しい制服に袖を通す。少し動きづらいが使っていく内に馴染んでいくだろう。
玄関に行き新しく買って貰ったローファーを履いていると、母親が忘れ物は無いか、ハンカチはちゃんと持ったか、と問いただしてくる。昨日の内に全部入れておいたのだ、忘れ物は無いと返事をし、家のドアを開ける。
「いってきます」
いってらっしゃいという言葉を聞きながら、私は学校に向かった。


以前からこうなるであろう、という確信があった。
学校の正門をくぐると、そこになんとなく見慣れた背中が2つ
私は理解するより先にその背中に近づき、名前を呼んだ
「織田作、安吾!」
同時に振り返った2人は目を丸々と見開き、口を開けていた。実に間抜け面である。その顔が面白くて見つめていたがやがて安吾が動き出した。
「お久しぶりですね、名前さん」
その声は少し震えていた。
ここで話すのも何だし、とりあえず私達は校舎内に入りクラス分けが書かれている掲示板を見に行った。
どうやら全員同じクラスだったようだ。高校生活が楽しくなるな、と緩む表情を抑えながら並んで教室に向かう。
「名前さんも、覚えていたんですね」
「バッチリ。2人はいつ出会ったの?」
「ここの通学途中にばったり会ったな」
「ええ・・・とても驚きました」
この2人も先程奇跡的な出会いをしたらしい。
そして、私達には”前世”という記憶を持っている。
久しぶりに出会えた友人は、昔よりも幼い顔立ちをして少し身長も小さい感じがする。
まだ成長期の途中だ、きっと昔みたく格好良くスレンダーになるに違いない。
この2人の外見からして女性から寄ってくるにだろう、羨ましいなちくせう
「ん?どうした?」
「いや何でも無い」
「人の顔をじっと見て何でも無いはないでしょう」
「いや2人がイケメンだなと」
「いけめん」
「イケてるメンズ。まあ顔が整ってるって意味」
なるほど、という顔をする織田作とため息を吐いて何を言ってるんだこいつと言いたげな顔をする安吾
ああ、懐かしい。だが少し物足りなさを感じていると後ろから織田作!!!という声が聞こえ振り向くと、その先には血相を変えた太宰が立っていた。
これであの時の面子が揃った。
懐かしさがこみ上げたくさん話し合いたいとは思うが、正直私は”あの事件”には関わっていない。丁度違う任務で出張に行っていた為、織田作の最期を看取る事も出来ず、ただただ単調な口ぶりで太宰から全ての話を聞いただけだ。
3人、それぞれ思う事があるだろう。それぞれの表情が感情を表している。いや織田作だけはいつもの無表情だが。
積もる話もあるだろう、と思い私は「先に教室行ってるね」と声をかける
黒板に貼られた座席表を確認し、自分の席に荷物を置いて廊下に出ると既に話し合いが終わったのか、3人の視線は私に注がれていた。
足早に3人に近づくと、太宰が口を開いた。
「やあ名前、久しぶりだね」
「久しぶりだね〜包帯の無駄遣いは相変わらずのようで」
「酷いなぁ、ところで私2組だったのだが皆のクラスは?」
新学期になると気になる所であろうクラスの話になった。
矢張仲の良い友人などと一緒の学校に進んだときは同じクラスになれたら、と思う所だろう。だが
「俺たちは1組だ。離れたな」
「え・・・何で私だけ違うクラスなんだ!私も一緒のクラスが良かった!」
「まあ落ち着け太宰。まだ入学したばかりだから同じクラスになるかもしれない。」
「そうだけどさぁ・・・この1年どう過ごせばいいのさ。はぁもうやる気出ない。あ、そこの美しい女性よ!どうか私と心中していただけないだろうか!」
「大丈夫そうだね」
「そうですね。教室に行きましょう」
相変わらずの友人を放りだし、先に教室に戻った。