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ライオットシールドで埋め尽くされた空間と倒れる警官。
それに取り囲まれた、被害者だったはずの銃を持った青年と、クレイジーに笑う金髪と開け放たれた銀行。
頭の奥は思いのほか澄み渡っている。
流星はそのまま音もなく、背後から青年に銃口を向けた。微かに、カシャッと音がする。
途端に青年は視線だけはどうにか背後を見ようとする。
しかし銃は下げない。
青年には「名前は?」と、静かに底冷えするような流星の声が誰もの鼓膜に張り付いた。
「アキタマコ…」
「ファーストネームだけでいい。アキタ。聞きたいことは二つだ。首謀者と目的だけ答えろ」
「首謀者?正気か…」
ハンマーを引く。
「いいから早くしろ。答えないなら死ぬ時間が早まるだけだぞテロリスト」
「リューセー…怖イね」
「どっちが犯人だかわかんねぇよ」
後ろの二人のガヤは最早流星の頭には入ってきていない。それくらいに頭が冴えている。
「潤、」
「あい」
「ジャンキー残して他下げろ。邪魔臭い」
「へーい。
はーい警察諸君あと3歩引いてー。撃ち殺されたくなかったらねー」
「動くな殺…」
「誰が誰を殺すって?」
後ろで向けられた流星の拳銃はアキタの後頭部に押し当てられている。
いつの間の出来事に、アキタも少しばかり焦りを感じ始めているようだ。
「殺すぞクソ野郎」
耳元で聞こえる静かな低い声。
ストックホルムシンドロームと言うべきか、殺害予告をされているはずが、セックスアピールよろしく心地よく聞こえてしまう程度にアキタの頭は興奮を極めていた。
というより元々頭はおかしい部類なのだ。
アキタはそれに、発狂寸前に笑い声をあげる。
「ハズレだよクソ公安。こんなとこでのんびりやってるうちに宗教団体は吹っ飛んでるだろうよ」
「はい、潤、OK?」
「バッチリ。
政宗聞こえた?んなわけでどっかに爆弾あるってさ」
潤がケータイを耳に当て、話す。それを見た共犯の二人は急に真顔に戻った。
「ルーク、銀行はどう?」
「一応反応アリだよー。近くダネー。危ないヨー」
続けてルークも爆弾探知機を見せつける。
確かに反応は近い。
みるみる、犯人の顔色が変わっていく。
「…てわけで警官諸君突入!するなら拘束している今がチャンス!」
先程までの狂気じみた口調とは打って変わり流星は叫んだ。何がなんだか一瞬の出来事に警官達はついて行けない様子。
それを見ている流星は「早くしろクソ公安!」と叫んで渇を入れる。
早くしろと言われても。
潤が仕方なしに、一番近くにいた警官へ話して促した。
その警官が漸く、 「銀行内に爆弾が仕掛けられているらしいです!」と叫ぶ。一同に動揺が走った。
「畜生っ!」
青年が最後の足掻きに逃げようとしたのか何をしようとしたのか、身動きをしたのだが流星はそれすら許さず後ろから青年を蹴り飛ばし、体勢を崩したところで銃を取り上げ、手錠を掛けた。
一連があまりに鮮やか。軍人のようだ。
その場にいた警官全員が息を飲んだ。
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