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恐らく、相手方は潤だけを誰かに引き渡して拉致、監禁してぶっ殺すと言う野暮な真似はしないだろう。
例えば別組織が動いていたとしても相手は潤だ。そして繋ぎ合わせたのは暁子だとわかっているならばそんな野暮なことは出来ないはずだ。
ならばやはり、潤は速見と共にいると考えた方がいい。例え速見がそちら側だったとしても、暁子がそちら側だったとしても。
ケータイが振動した。慧さんからメールが入った。
メールを見て唖然。
おいおい、速見ってヤツはどんだけ六本木に入り浸ってんだよ…。
全部で4件は該当するホテルがあった。こうなりゃ、しらみ潰しだ。
しかしまた、すぐにもう一件メールが来た。
愛蘭さんにただいま確認を取っていただいています。
マジか。
「どう、です?」
「うん、やっぱみんな」
優秀だ。
そしてすぐに愛蘭から電話が来た。
「もしもし」
『お疲れさまですこんばんわ。慧さんから少しお話を伺いました。
部長が今いる位置からですと少し距離がありますが、地図はケータイに送ります。少し怪しいホテルが2件ありました。
4件中2件は、はっきりとほとんど来店していないと答えたにも関わらず、他二件は、「お客様の個人情報です」と突っぱねられてしまいました。どうしますか』
「なるほど…。そのパターンはどちらも怪しいな。
ちなみに愛蘭、いまケータイで探査してんの?」
『いえ、パソコンです』
「なるほど。お前サイバーテロは得意だよな」
『まぁ…』
「わかった。じゃぁね…
俺のケータイに逆探してきたヤツにウイルスを送り込む方法、わかる?」
『無茶しますね。わかりますよ』
「それで行こうか。したら、まずは宛にならんが潤がケータイの電源を切った場所を割り出して欲しい。そこから、侵入者のケータイの位置。したら第三者、つまりは逆探してきたヤツの場所まで割り出せる。これで漸く俺は潤のケータイにコンタクトが取れるな」
『まぁ、確かに。と言うか私の考え、いいですか』
「なんなりと」
『潤さんのケータイにウイルスを送り込む』
「逆転の発送だな。だが、潤が電源を入れないとそれは無理だろ」
『まぁ…』
「あいつは多分、入れない。ならば素直に場所を割り出した方が早いな」
『わかりました。やってみます』
「頼みました。俺はその間、まぁ時間も掛かるだろうし、取り敢えずは4件、優先順位的に突っぱねられた方に向かいます」
『かしこまりました。お気をつけて』
そう言って電話を切った。
俺はさらに慧さんに電話を入れる。
「もしもし」
『はい、お待ちしておりました』
「愛蘭とは連絡が取れました。
突入前に。慧さん、速見の素性を調べて頂きたいのですが」
『抜かりありません。検挙する手立てとしては薄い線から行きますと、不審な捜査資料ですかね。
あとは彼は、少年院に一時期勤務していたようですね。ごくわずかですが。離れたあとも何度か訪問されてますね。場所は神奈川県です。
あとは會澤組の一件、あれの件で先行捜査を打ち切ったのも彼が言い出しっぺのようですね』
なるほど。
『あとはその少し前に彼のSPがどうやら殉職していますね』
「…どこの誰だかわかりますか?」
『ええっと…。
|宮古《みやこ》|葵《あおい》23歳、経歴がわからないな…。多分新人だったんじゃないかな。なんかすらっとした線の細い男の子ですね』
なんだそりゃ。
「え、なにそれ」
『ん?
出身地不明が宗教施設“|昴《すばる》の会”って…』
「は?え?」
“昴の会”…。
「ありがとうございます。なんとなく見えてきました。
賭けですが慧さん、4件のホテルの出資社、調べられますかね」
『かしこまりました…』
これはもしかすると。
もの凄く近付いたかもしれないぞ、潤。
電話を切った。
「流星さん、なんか…。手応えあったんですね」
「…あぁ」
ただ、もし本当に的を射ていたら。
「急がねぇとあいつ、マジメに死ぬな」
死ななかったとしても、薬漬けになるかもしれない。
「そんな弾でもねぇだろうけど…」
せめて俺が行くまでは。
勝手に死なせてやりはしない。
「流星さん」
「ん?」
「心配ですか?」
そう言われてみると…。
「クソ程そうでもねぇな」
「素直じゃない」
伊緒が笑った。
少し安心した。
そうだ、あいつは多分もう少し図太いけど。
『たまにとんでもなく遠くに行っちまってる』
それは事実だ。
「だがたまに引っ張ってやんねぇといけねぇくらいにはわがまま姫なんだよ」
全く持って面倒極まりない。
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