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「元カノだ潤の」
「うわ、は?え、なにパニック」
「ですよねー、だって俺の元カノでもありますから」
「は?あ?え?」
うわぁ、明らかなる政宗の動揺。言いたくないなぁ。
「まずそのなんだ、仕事堅気な女だったんすよ、はい。で、俺が初彼らしくて。そっからどーもねぇ、あれなんすよね、その…。
俺よく言われるんだけどさ、物足りない男らしいのよ、で、破局。
巡り巡って潤から聞くわけ。ヤバイ女いるみたいな。見りゃぁマジかとカルチャーショック。
で、巡り巡って政宗のとこに行ったんだなぁ…」
「うわぁ、マジかよ。お前ら死ねばいいのに」
「あぁホントにな」
「お前ってなんでそう…人をダメにする素質があるわけ?甘やかし体質だよな」
「うるさいなぁ」
わかってるわ。
多分樹実のせいだ。あいつが典型的なそれだった。しかし気が付いたら俺は一人暮らしじゃね?状態だった。
最初は、俺はあいつから色々なものを吸収したはずだったんだが。そして文句もあいつに言ってきたはずだったんだが。
「ま、良いとこであり難点だよなぁ。お前にぶっちゃけ新人任せたくないもん。まだ潤の方が新人教育には使えるわ」
「マジか。けど…」
確かにな。それには俺も同意するところはあるかも。
「まぁ俺も言うてそれほど向いてねぇけど」
「…だからじゃないですか?」
「俺のせいか」
「ですね」
まぁ、実はそんなことはないけど。
ふと政宗ががばっと俺の肩を鷲掴むように抱きついてきて。驚いて政宗の顔を見つめると当たり前ながら顔が近い。
こいつなんで髭剃らなかったの、いつも思うけど。
口元が笑った。優しい目で見つめてくる。てか、よく見りゃこいつ、また飲んでやがる。
「あんさ」
「ん?」
「明日仕事行く気ある?」
「久々だからミスってニトログリセリンをぶちまけたらどうしよう」
「…やっぱ行く」
「いいよ」
今度は離したかと思えば両肩を向き合うように掴んできた。
痛ぇよゴリラ。
「お前はまず自分のことを何とかしろ。こっちは俺に任せとけ」
「…はぁ、痛い」
「いいから、なぁ流星」
「なんですか」
「信用してくれなくてもいいけど、俺やっぱ裏切れねぇわ。お前も潤も…樹実も」
まさかその名前が出てくると思わなくて面食らった。
この人も、拘ってる。
「あぁ、そう」
「流星、」
「まぁ野暮なこと言うが、あんたにだったら俺は別に裏切られようが殺されようが正直、多分恨めないんだ。今しか言わない弱音だが。
俺は樹実よりは、背負わなければならないからな。あいつなら多分背負えないが俺は…」
「いや、いいよ流星」
ふと見上げると、政宗と目が合い、にっこりと、だけど哀愁を含んだ笑顔で見つめられた。
まぁ、いいか。
しかしこれは恋人にやりなさいよ。ここは日本なんだからさ。
「…寝ましょうか、政宗。明日あんたは早いでしょ」
「俺逆に起きてようかなと思ってたけど」
「起こしてやるから少しでも寝てください」
「わかったよ」
そう俺が言うと漸く政宗は離れてくれて、最後にガシガシ頭を撫でられた。
「どうしたのあんた今日は」
「久しぶりだからやっぱ、お前らみんな可愛くて仕方なくてな」
「あっそう…」
てか眠い。
最早政宗の熱情に構っている余裕も余りなく俺はそのままソファに寝転んだ。「ベット使っていいけど」と言う政宗のぼやけた言葉にも、「ふん…」とテキトーに返して眠ってしまった。
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