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「あーやべぇなあの人。ちょっと萌えますね」
「は?」
「いやぁ、あーゆーなんかわかりやすいプライド高い奴って、いざこう弱っちゃうと苛め甲斐ありますよねぇ。守りたくなっちゃう」

なにこいつ。

「え、え?」
「まぁ流星その、なんだ、Break a leg!マトリと仲良く出来てよかったなー」
「はぁ?へぇ?」
「ささ、部長さん行きましょ。
 よっちゃん!お茶はいいから早く行こう!医療大の間取り持ってきて!」

 前髪辻井、ふらふらしていた吉川なる、オールバックの一見強そうな奴に一声掛け、俺の肩を叩き、ドアへ誘う。

なにこの突然のやる気。どうしたのお前。
ただただ変キャラに困惑なんですけど。

果たして俺、このまとまりがない奴ら、総括できるの?でもまぁ。

「やるしかないよねぇ…」
「え?部長さん?」
「なんでもないです」

 取り敢えずは部署に戻って現状報告と人員配置を伝えなければならないな。というか人員配置だけを伝えてあとはそれぞれの部署で作戦を立ててもら…

「おい前髪、早く書類をあいつらに渡してくれませんか」

なのに潤と来たら。

 部署の前で突然立ち止まり、あからさまに喧嘩腰状態。てかなんだそれよくわかんないんですけど。

「はぁ…はい」
「流星、我慢してたけどもーダメヤニ切れ。あと一発撃ち込みたいマジ俺しばらく撃ってないから腹の傷開いて内臓飛び出して死ぬかもしれないから一発付き合え。ここ射撃場あるよな?」
「は?」
「ないですよ」
「はぁ!?
 なんなの使えねぇな爆弾仕込むぞクソ厚労省。流石お役所」

 辻井くん吉川くん、潤への反応に困っている。しかし潤はそんな自分に慣れている。
 一瞬の妙な間と空気で一歩引き、冷めた目で相手を見てからさして感情も込めず「悪いね」と言ってから「流星、」と潤は続ける。

「仕方ねぇからタバコ…」
「それなら俺も行っていいですか?」

 さっさと去ろうとする潤の袖をふと掴んだのは、前髪辻井くんだった。
 予想外の反応に、潤自身も一瞬の殺伐を消せず、まるで射殺すような目付きで見下ろしてしまっていた。

 だが辻井は辻井で若干、薄ら笑いだ。手は離したが、正直こいつら何を考えているかわからない。

「別にいいけど…」

おっと。
フラッシュバックするのは辻井のさっきの発言だ。こりゃぁ本当に潤の野郎、劣性か。

 もちろん潤の不機嫌は悪化。そしてやつの不機嫌はなかなか、ゴキブリ以上なしぶとさがあるわけで。なんせ我が儘、性格破綻。

君、見た目に騙されてはいけないぞ。そいつ、相当なくせ者だぞ。めんどくせぇメンタルガバガバ野郎だし。一言でクズだぞそいつ。凡人は複雑骨折するぞおい。

「なに見てんの気持ち悪ぃな変態鉄面皮。早くしろよヤニ切れだっつってんだよ頭回らんわ」
「わかってるよ性格破綻」

 取り敢えず辻井くんに案内され、喫煙所に行く。
 喫煙所というか。

「道じゃん」

 外のなんかよくわかんねぇ、最早厚労省の敷地なのかこれ?みたいな迂回ルートに石で出来た灰皿が何個も等間隔に置いてあった。

 潤の不機嫌、加速して、俺の不機嫌ゲージもちょっと上がった。
 これ毎日とか憂鬱すぎて出勤したくねぇけどマジで。

「これはさぁ、もう俺らの迂回ルート考えようよぶちょー」
「そうだなマジメにこんなんじゃ明日から廃人のように働くしかないよな」
「お前ならありえるよね。ヤニ切れでぼさっとしてんの」
「お前は多分貧乏揺すりと発狂だよな」
「ねぇこれマジでどうにかしろよ、つーかさっきからなんなんこのクソライター、いらねぇよバカ流星」

えなにそれ。
それ、勝手に人のジャケットからパクったやつが言うセリフかクソ女顔。最早お前なんて爆発すればいいのに。

 カチカチカチカチずーっとやってるのが確かにイライラする。

「お前なぁ、気が短い、下手くそなんだよバ」

 そんなときだった。

「火、ありますよ」

 忘れていたがそう言えばいたな前髪辻井。もっと早く言えよ使えねぇとか思っていたら突然のシガーキスを潤にお見舞い。
 潤はしかし特に気にする、抵抗感のような様子はない。ただ、一睨みというか、ちらっと辻井を見て煙を吐き、「サンキュー」と言うのに微妙な空気を感じた。

なんというかさっきからこの二人、どこか殺伐としている駆け引き感を感じるのだが。

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