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「何言ってんの。俺もゲイではないよ。オカマバー行くけど」
「大差ねぇ」
「あんたなら行けっかなーとかぁ?まぁわかる通り酔っぱらってるしい?」
「そーゆーのがウザイんだよ」
「なんだバイセクシャルなんだ。じゃ行けるじゃん」
「なんなのその男子校ノリ。バカなのお前」
「あんた男子校?」
「若干。
 じゃなくて」
「はいはいまどろっこしーことはいーから」

 肩を掴まれ促されるが。

「嫌だって、俺今賢者タイムだし!」

 辻井を振り払おうとするがふと顔を近付け耳元で「會澤のホストクラブ跡地の話、聴きたくないの?」と言われ、硬直してしまった。
 瞬間になんとなく俺の中で組上がった。
なるほどお前。

「…マジでストーカー?」
「たまたまだよ」

 そしてふいに首筋を唇でうっすらなぞられ、最早俺唖然。立ち尽くすくらいに硬直。
 それを見た辻井は楽しそうに無邪気に笑い、「はい、決定〜」と俺の手を引いた。

「いやマジで勘弁してよ」
「んなこと言わないでよ」
「言うわ俺お前タイプじゃねぇんだって」
「ワンナイト感覚で」
「ふざけんなよ、嫌だマジで、ホントにぃ!」
「大丈夫約束は守るから」

 言うてフロントまでわりとガチな力で引っ張られ、辻井は慣れた手つきで空きのスイート、しかもフレックスのパネルを押して鍵とレシートを取り出す。

「スイート開いてた〜よかった〜」
「スイートとか、」

マジでカップルで行くやつじゃん。
うわぁ最悪。俺あの女すら精々Cだったんだけど。

 「5階だって〜」とすっごい笑顔でエレベーター呼んで言われるのマジで腹立つ。Cは3階だったっつーの。

「クッソ死ねマジで!」
「はいは〜い、来たよー」

つーか握力。
ゴリラかよ。マトリってみんなゴリラかよ。

 エレベーターが空いた瞬間、わりと投げられるようにそれに乗せられたかと思いきや。扉が閉まる前に壁に押し付けられ、すっごい間近で「ホントに嫌?」と、
 年下の目で言われた。酒臭い。

「…やだね酒臭…」

 言う間もなく唇を塞がれた。
勘弁してゲロい。
 そして押し付けられた股関マジ勃ち。
勘弁してゲロい。

 舌を入れてきやがったのでわりと入り口で噛んでやった。
 「痛っ、」とか言いながら辻井が少し離れたのでマジでぶん殴ろうと手をあげるも、瞬発力で手首は取られた。
 そこでエレベーターは止まる。そのまま引っ張られて。

てかなんでんなマジ勃ちでしっかり歩いてんだよお前。

 「ふぅ、」と一息吐いて言われた、「言うてあんた、挑戦的なクセに乗り気じゃね?」と勘違い甚だしい。

「人権侵害とかセクハラでマジで訴えんぞクソ野郎」
「人権侵害って…。はい、506」
「あはい。
 じゃなくて!嫌なんだって」
「外で聞かれたら大変な話なんだよ?マジで」
「ねぇ絶対嘘だよね」

 ドア開けられて部屋に入ったらまた壁ドンでキスされて。

なんなのこいつは。

 だが俺を離して両肩をがしっと掴んでくる辻井はわりと真剣な表情。

「のわりには野良猫みたいに、帰る家なんてない顔してるじゃん」

…まぁ確かに。
こっから帰ろうかとかどうしようかとかあんま考えてなかったけど。

 俺はわざとらしく唇を手の甲で拭き去り「だから?」と聞くも、なんかマジすぎる辻井に若干流されている俺がいる。
 まずは自己防衛「なんのつもりだよ」を言ってみたら素直に、

「あんたとヤりたいだけだけど」

とかマジ声で言われては「うっ、」と、圧倒されて顔を反らすしかなくなった。

「なんで…」
「んー、興味本意に近い恋」
「なんだよそれ、」
「あんたのワンナイトと大差ないと思うんだけど」
「…俺のは」

公衆便所だわ。
言えんけど。
つか地味に傷付く公衆便所。

「…違うっての?」
「俺のなんて大した意味ねぇよ。でもまぁ公衆便所の名に掛けてぇ、排泄くらいは手伝って」
「誰が言ったのそんなこと」
「えっ、」
「むちゃくちゃ酷くないかその異名。何?部長さん?荒川さん?」
「いや…」

 今度は怒気。
なに今のキレやすい年下。怖いけど若干。

「じゃ誰よ」
「いや、え?中学のときのあだ名ですけど…」
「ひっでぇ」

 そのままふわっと辻井に抱き締められた。
なんじゃこれは。

「俺はそんなこと言わないけど」
「い、痛いんすけど」

主に、押し付けられてる息子さんが。

 蹴ったろうかと当たる左足を上げれば、すりすり擦り付けられて一層惨めに。

いや、
公衆便所のがマジでマシかもしれない。

「俺わりとマジだよ星川さん」
「だから何故だって」
「わかんねぇし。ま、強気なとこわりと好きだね」

わりと好きだねぇ?

「へ、変態だよお前!」
「まぁね〜」
「待ってホントに選ぶ権利とかそれ人権にあると俺思うんだけど」
「テンパってるねぇ」
「当たり前じゃん!」

こんだけ見事にこっちが拒否ってんのにまず、傷付かないお前なんなのin まだ玄関。普通のメンタルなら萎えるだろ、ましてや相手、同姓だぞおい。

 目を細めて見下ろす辻井は更に言う。

「だから、そのわりに満更じゃなさそーな表情なんだよ星川さん。あんたアホって言われないか?」

いや。
え?
満更嫌なんすけど。驚愕。なにお前。宇宙人なの?

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