4
「…で、」
「はぁ…。
話しかけんなって言いたいけど気力ない」
「…祥真なんだな、マジで」
声を落として流星は言う。
それに思わず睨み付けてしまった。
このクソ野郎、カマかけやがったな。
「…てめぇなんのつもりだよおい」
「悪いけどお前よりかあいつとは長いんだよ」
「カマ掛けたなてめえ」
「そうだよ」
「殺すぞてめえ」
「あーめんどくせぇなお前ら。マジで今その喧嘩無駄だっつーのがわかんないのかいい加減。何年やってんだよクソガキ共」
「…うるせぇよ、あぁそう、何?そうかいそうかいそんなに信用ならねぇか俺が!」
「当たり前じゃん」
「流星黙れバカ。
お前がじゃねぇよ山下がだっつーの頭悪ぃな。何年やってんだよ、あんなマジもん見せられたらそんくらい考えるだろ普通。だから山下の行方を聞いてんだろ、バカ」
何。
「…何言ってんの、それ」
祥ちゃんの、行方?
「…お前、仮にも一緒にいたんだよな。プライベートはよく知らねぇがあいつは若干自殺願望者だぞ」
「…何、これ置いてピストル自殺でもすると思って」
警視庁長官暗殺、暁子を射殺、…恭太の殺人疑い?
“昴の会”関係者で、高田さんの元でモグリをやっていた、そもそも警察庁立て籠り事件があり、内部告発のCD-Rと大学テロ事件、ユミル失踪に出向いていて…、
最早この鉄屑に意味はない。また朝のパソコンに戻るも二人は俺を見ていた。構わずパソコンを弄る。
「あぁ長官殺したのは山下だよ」
それには二人ともただ、黙って俺に答えを促しているように感じた、.375マグナムはスナイパーライフルだと仮定し、“昴の会”=エレボスだとして流星の知り合いだった月夜里祥真は
「潤、」
「んで持ってその犯行の証拠となりそうな監視カメラ映像は俺が消した」
そもそも一年前にワシントン発砲事件の残党として警察庁機動捜査隊に属し、後に二階級特進し元防衛大臣の息子である星川潤と接点を持つ。
「おい、潤?」
「多分暁子を殺したのも山下だよ」
彼はFBI日本支部長高田創太の元へモグリとして働き「は?」…
「うるさい黙れ殺すぞお前ら」
「いや、」
「ふざけんなよじゅ」
「ふざけてなんてねぇよ、あぁぁ!うるさい、ホント静かにして、マジで。…」
完璧に書類が止まった。咄嗟に紙の束を散らしてしまった。
祥ちゃん、
「わかんねぇんだよ、本気で!あぁぁっ!でも知ってんだよ、わかってたんだよどっかで!」
ホントは、祥ちゃんのことなんて何一つ知らなかったんだよ、俺。
急に立ち上がって血圧が上がったのか過呼吸こいた。溜め息を吐いた政宗が立ち上がって側に寄ってきて抱擁しようとするも「触ら、ないで、」と振り払ってしまった。
「どうしょもねーな…ったく」
政宗が一度離れる。部署を見渡しても皆一人一人、どうも微妙な雰囲気で。
当たり前だ。俺は一体こいつらと何をしてきたんだ、誰と、何と戦ってきた。だけど…、間違ってはいないと本当は自分に、そう言いたい甘えだってある。
一人過呼吸こいてたら真横に、政宗の気配だとわかる。開けたペットボトルの茶が視界に入り、「落ち着け」と背中を擦られたら、それどころかより酷くなった気がする。涙まで相当溢れてきた。
「飲めねぇか、まだ」
漸く顔を上げたら「はいはい」と、思ったよりは、優しい先輩の笑顔だった。
「顔上がったならおっさんの口移ししますけど?お前美人だな〜」
「…っ、は、?」
涙を拭ってくれたかと思いきや、俺の後頭部を掴むように押さえると同時に、涙を拭ったその中指の関節をがっと口に突っ込まれた。
え、何プレイなのこれ。
「しょっぱいだろ、おい」
あっ、
笑顔が黒い。
横目で部署を見渡したら明らかにみんな、最早恐怖やら唖然やらなんかカオス状態の雰囲気で。
奥の辻井が顔を気まずく背ける。
やべぇ。
「で?山下はどうしてんだって俺聞いてるんだけどクソ美人」
「かっ、」
「ちょっとちょっと…」
流石に流星が止めに入ろうと立ち上がった。
「あぁ?うるせぇんだよぶちょーは早く営業行けよこのポンコツ」
「待った、ホントにヤバいから政宗」
「てめぇらさっきから、」
殴る勢いで後頭部はひっ掴まれ、指から離れたけどめちゃくちゃ痛ぇ、禿げる。
ぱっと離されてよろつき、てか転び、デスクを頼りにして起き上がろうとすれば、
「だぁるぇに向かって口利いてやがるこのポンコツ共、ぶっ殺されてぇかこのクソガキぃ!」
キレた。
まだまだ過呼吸こいてるけどすげぇ息止まりそう、ホントに。
何年ぶりかわからない、忘れていたけど政宗、キレたらめちゃくちゃ怖いんだった。やり場なくしてと言うか勢いで椅子を蹴っ飛ばしてくる。やべぇ当たる。けど硬直して動けねぇ、ギリ真横通過。
「俺をなんだと思ってやがるんだてめぇらオイコラぁぁ!んな生易しいことやってっから解決しないんだろうがやる気あんのかオイ、てめぇ何人仲間ぶっ殺したら気が済むんだ辞めろ、来んな、おい聞いてんのかクソ野郎、いい加減にしろっつーんだよ、このボケぇ!」
気付いたら馬乗り。ヤバイこれマジで捻り殺される。
胸ぐら掴まれてついに恐怖に達した。
- 349 -
*前次#
ページ: